仲介手数料の法改正を完全解説|800万円以下の上限・計算方法・売主買主への影響
2024年7月1日施行の宅建業法改正により、800万円以下の物件の仲介手数料上限は売主・買主双方とも30万円+消費税(税込33万円)に引き上げられた。従来400万円以下・売主のみだった「低廉な空家等の媒介特例」が大幅に拡大された形だ。特例適用には媒介契約時の事前合意が必須であり、仲介会社が一方的に手数料を引き上げることはできない。この記事では、改正の全体像から価格帯別の計算シミュレーション、売主・買主それぞれへの影響、仲介会社の実務対応(トークスクリプト・媒介契約書記載文言テンプレート付き)、賃貸の長期空室特例まで網羅する。
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仲介手数料の改正とは?宅建業法改正の全体像(2024年7月施行)
2024年7月1日施行の宅建業法改正で、800万円以下の物件の仲介手数料上限が30万円+消費税(税込33万円)に引き上げられた。 対象は売主・買主双方で、空き家に限らず全ての低価格帯物件が対象だ。背景には空き家900万戸超の深刻化がある。
改正の核心は「低廉な空家等の媒介特例」の対象拡大と上限引き上げだ。従来400万円以下・売主のみだった特例が、800万円以下・売主買主双方に拡大された。
改正の概要|800万円以下の物件で上限30万円+消費税に
2024年7月1日に施行された宅建業法の報酬規程改正(令和6年国土交通省告示第949号、2024年6月21日公布。昭和45年建設省告示第1552号の一部改正)により、売買価格800万円以下の宅地・建物の媒介について、通常の計算式にかかわらず、売主・買主それぞれから30万円+消費税(税込33万円)を上限として仲介手数料を受領できるようになった。
法令の根拠は宅建業法第46条第1項に基づく国土交通大臣の告示(告示第七・第八の規定)だ。告示では「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等の媒介に関して依頼者から受けることのできる報酬の額」の特例として、低廉な空家等(売買代金の額が800万円以下の宅地又は建物)について上限30万円の報酬を定めている。ただし、告示上は「当該媒介に要する費用を勘案して」上限額の範囲内で報酬を受領するとされており、一律に上限額を請求できるわけではない。仲介にかかる実費・業務負荷に応じた合理的な金額設定が求められる。
告示第七(令和6年国土交通省告示第949号):「低廉な空家等(当該媒介に係る代金の額が800万円以下の宅地又は建物をいう)の売買又は交換の媒介であって、通常の売買又は交換の媒介と比較して現地の調査等の費用を要するものについては、(中略)当該媒介に要する費用を勘案して、30万円の1.1倍に相当する金額以内とする」
- 報酬規程: 国土交通省 宅建業者の報酬規程
- 法令根拠: 宅地建物取引業法第46条(e-Gov法令検索)
| 項目 | 改正前(2018年〜) | 改正後(2024年7月〜) |
|---|---|---|
| 対象価格 | 400万円以下 | 800万円以下 |
| 対象者 | 売主のみ | 売主・買主双方 |
| 上限額 | 18万円+消費税(税込19.8万円※消費税10%時) | 30万円+消費税(税込33万円) |
| 適用条件 | 媒介契約時に合意 | 媒介契約時に合意 |
改正の対象は「空き家」に限らない
特例の正式名称は「低廉な空家等の媒介の特例」だが、対象は空き家に限定されない。800万円以下の宅地・建物であれば、居住中の物件でも、更地でも、投資用物件でも適用される。行政の認定や特別な手続きも不要だ。「等」の一文字に、空き家以外の全ての低価格帯物件が含まれている。
2018年改正→2024年改正の背景と経緯
仲介手数料の特例は、深刻化する空き家問題への対策として段階的に拡充されてきた。
2018年1月: 特例の新設
総務省「住宅・土地統計調査(2013年)」(調査対象:全国約6,063万住宅)で全国の空き家が約820万戸に達したことを受け、「低廉な空家等の媒介の特例」が新設された。400万円以下の物件について、売主から18万円+消費税(当時の消費税8%で税込19.44万円、2019年10月の税率引き上げ後は税込19.8万円)を上限に受領可能に。しかし対象が売主のみ・400万円以下と限定的で、仲介会社が低価格帯物件を敬遠する構造は十分に解消されなかった。
2024年7月: 対象拡大と上限引き上げ
総務省「住宅・土地統計調査(2023年)」(調査対象:全国約6,502万住宅)で空き家が約900万戸・空き家率13.8%に上昇(都道府県別では和歌山県・徳島県の21.2%が最も高い)。仲介手数料は売買価格に比例するため、低価格帯の物件ほど手数料が低くなる。たとえば200万円の物件の原則手数料は11万円(税込)に過ぎないが、物件調査・広告・案内・契約事務などの工数は価格帯に関係なくほぼ同じだ。この構造的な採算割れを解消するため、対象を800万円以下に拡大し、上限を30万円+消費税に引き上げ、さらに売主だけでなく買主からも受領可能とした。
ただし、手数料引き上げだけで空き家流通が十分に促進されるかには慎重な見方もある。老朽化・接道条件・権利関係の複雑さなど、物件自体の課題が流通の障壁となるケースも多い。
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改正前後の仲介手数料を計算シミュレーション
800万円以下の物件では仲介会社の収入が大幅に増えるケースがある。 100万円の物件で片手仲介の場合、原則5.5万円→特例33万円と約6倍の差だ。500万円の物件では原則23.1万円→特例33万円。両手仲介なら差額はさらに倍になる。
改正の影響を具体的な数字で確認する。
仲介手数料の原則的な計算方法(速算式)
仲介手数料の上限は宅建業法で定められている。400万円超の物件は「売買価格×3%+6万円+消費税」の速算式で算出する。
| 売買価格 | 料率 |
|---|---|
| 200万円以下の部分 | 5% |
| 200万円超〜400万円以下の部分 | 4% |
| 400万円超の部分 | 3% |
400万円超の物件は速算式「売買価格×3%+6万円」で同じ結果になる。
⇒仲介手数料の計算方法と早見表はこちら
【早見表】改正前後の仲介手数料比較(価格帯別)
| 売買価格 | 原則の上限(税込) | 改正後の上限(税込) | 差額 | 増加率 |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 5.5万円 | 33万円 | +27.5万円 | 約6倍 |
| 200万円 | 11万円 | 33万円 | +22万円 | 約3倍 |
| 300万円 | 15.4万円 | 33万円 | +17.6万円 | 約2.1倍 |
| 400万円 | 19.8万円 | 33万円 | +13.2万円 | 約1.7倍 |
| 500万円 | 23.1万円 | 33万円 | +9.9万円 | 約1.4倍 |
| 600万円 | 26.4万円 | 33万円 | +6.6万円 | 約1.3倍 |
| 700万円 | 29.7万円 | 33万円 | +3.3万円 | 約1.1倍 |
| 800万円 | 33万円 | 33万円 | ±0 | 1倍 |
改正後の上限は売主・買主それぞれに適用される。800万円が損益分岐点であり、この価格帯では原則計算(800万円×3%+6万円=30万円、税込33万円)と特例上限(30万円+消費税=税込33万円)が一致する。なお、上記の売買価格はいずれも税抜価格(土地は非課税、建物は税抜)を基準としている。増加率の「約6倍」は100万円の物件を片手仲介(売主または買主の一方のみ)した場合の数値であり、全ての取引でこの倍率になるわけではない。
具体例で見る改正のインパクト
例: 500万円の中古住宅を売買した場合
- 原則の手数料上限: 500万円×3%+6万円=21万円+消費税=23.1万円(税込)
- 改正後の特例上限: 30万円+消費税=33万円(税込)
- 仲介会社の収入増: 売主から+9.9万円、買主からも+9.9万円
両手仲介(売主・買主双方を仲介)の場合、原則46.2万円→特例66万円となり、1件あたり+19.8万円の増収だ。月2件のペースなら年間約475万円の差が出る。
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売主への影響|手数料負担は増える?
売主の手数料負担が自動的に増えるわけではない。 特例の適用には媒介契約時の事前合意が必須であり、合意なく上限額を請求されることはない。200〜400万円台では合意メリットが大きく、700万円台では交渉余地がある。
事前の合意がなければ上限引き上げは適用されない
国土交通省は、特例の適用にあたり「媒介契約の締結に際し、あらかじめ、定められた上限額の範囲内で、合意しておくこと」を求めている。仲介会社が一方的に手数料を引き上げることはできない。合意なしに特例上限額を請求した場合は宅建業法違反となる。
「手数料が上がった」と言われたときの確認ポイント
売主として以下を確認すべきだ。
- 媒介契約書に特例適用の記載があるか
- 手数料の金額について事前に説明を受けたか
- 合意した金額は30万円+消費税の上限内か
- 物件価格が800万円以下であるか(800万円超なら特例は適用されない)
これらのうち一つでも「いいえ」がある場合、仲介会社に確認を求めるべきだ。解決しない場合は各都道府県の宅地建物取引業担当課に相談できる。
売主にとってのメリット|仲介会社が積極的に動くようになる
手数料の上限引き上げにより、仲介会社が低価格帯の物件でも採算が取れるようになった。従来は手数料が低すぎて敬遠されがちだった200万〜400万円台の物件でも、仲介会社が積極的に営業活動・広告投資を行うインセンティブが生まれた。
売主にとっては「引き受けてもらえない」リスクが下がるメリットがある。地方の空き家を相続したケースや、築古物件の売却で複数社に断られた経験がある場合は、改正による恩恵が大きい。
特例に合意すべきかの判断基準(価格帯別)
売主が特例適用に合意すべきかは、物件価格帯によって判断が分かれる。
| 価格帯 | 原則との差額 | 判断 |
|---|---|---|
| 200万〜400万円台 | 13〜22万円 | 合意メリットが大きい。他社に断られた経験がある場合は特に有効 |
| 500万〜600万円台 | 6.6〜9.9万円 | バランスゾーン。仲介会社のサービス内容と照らし合わせて判断 |
| 700万円台 | 3.3万円 | 原則計算(29.7万円)との差額が小さい。原則計算での契約を打診する選択肢もある |
特例はあくまで「上限」であり、仲介会社と交渉して上限以下の金額で合意することも可能だ。
買主への影響|購入時の手数料も変わる?
2024年改正で特例の対象が買主にも拡大された。 買主も最大33万円(税込)の手数料を支払う可能性がある。ただし特例は「上限」であり、媒介契約時に手数料について確認・交渉することが重要だ。
2024年の改正で最も大きな変更点の一つが、買主への特例拡大だ。従来の2018年特例は売主からの受領のみが対象だったが、改正後は買主からも30万円+消費税を上限に受領できるようになった。
従来は売主のみだった特例が買主にも適用
2018年の特例では、低価格帯物件の仲介手数料増額は売主側のみに適用されていた。「売却を依頼する売主の負担で仲介活動を支える」という考え方に基づいていたためだ。2024年改正ではこの制限が撤廃され、買主側にも特例が適用されることとなった。
買主にとって具体的にどう変わるかを見ると、たとえば500万円の中古住宅を購入する場合、従来は原則上限の23.1万円(税込)が最大だったが、改正後は33万円(税込)まで請求される可能性がある。差額は9.9万円だ。
買主が手数料を抑える方法
- 媒介契約時に手数料について交渉する。特例はあくまで「上限」であり、必ずしも上限額が請求されるわけではない
- 仲介手数料無料・割引を行う不動産会社を利用する。ただし、サービスの質とのトレードオフに注意が必要だ
- 売主から直接購入できる物件を探す。売主直売の場合、仲介手数料自体が不要になる
媒介契約時の確認・交渉のポイント
買主として、媒介契約を結ぶ際に以下を確認すべきだ。
- 手数料は原則計算式と特例上限のどちらが適用されるか
- 特例上限(33万円)ではなく原則計算額での契約は可能か(例: 500万円の物件なら「原則の23.1万円で契約したい」と打診)
- 媒介契約書のどの条項に手数料が記載されているか
- 手数料以外の費用(実費等)は別途請求されるか
特例適用には売主と同様に事前合意が必要であり、合意なしに上限額を請求された場合は宅建業法違反だ。
仲介会社の実務対応|媒介契約・重説での注意点
仲介会社にとって改正は収益改善のチャンスだが、媒介契約時の説明義務が厳格化された。 特例適用には事前合意と契約書への明記が必須だ。説明不足によるトラブルは宅建業法違反として行政処分の対象となる。
媒介契約時の説明義務と合意取得の手順
特例を適用するためには、以下の手順が必須となる。
- 媒介契約締結前に、特例による手数料の上限額を説明する
- 通常の計算式と特例適用後の手数料の両方を提示し、依頼者に比較検討の余地を残す
- 依頼者(売主または買主)の合意を得る
- 合意した金額を媒介契約書に明記する
「通常の手数料計算式」と「特例適用後の手数料」の両方を提示しないまま合意を取ると、後日トラブルの原因になる。
売主・買主への説明トークスクリプト例
特例適用の説明は、依頼者のタイプに応じてトークを使い分けることが有効だ。
パターン①: 合意しやすい売主への説明(低価格帯・他社に断られた経験あり)
「○○様の物件は売買価格が○○万円ですので、通常の計算式ですと仲介手数料の上限は○○万円(税込)となります。正直に申し上げて、この金額ですと広告費や調査費を考えると採算が厳しく、お引き受けを躊躇する会社もあるかもしれません。ただし2024年7月の法改正により、800万円以下の物件については上限33万円(税込)まで受領できる特例が設けられました。当社では○○万円(税込)でお引き受けし、しっかり販売活動を行いたいと考えております。」
パターン②: 抵抗のある売主への説明(手数料アップに慎重な方)
「特例は上限の引き上げであり、必ず33万円になるわけではありません。○○様の物件は○○万円ですので、通常計算ですと○○万円(税込)が上限です。今回、当社では○○万円(税込)でのお引き受けを提案させていただきます。通常計算との差額○万円分は、○○(例:追加の広告出稿、写真撮影)に充てることで早期売却を目指します。もちろん、通常計算の○○万円での契約も可能です。」
パターン③: 買主への説明
「今回ご検討の物件は○○万円ですので、2024年7月の法改正による特例の対象となります。通常計算では仲介手数料の上限は○○万円(税込)ですが、特例上限は33万円(税込)です。当社では○○万円(税込)でお引き受けしたいと考えております。ご不明点があればお気軽にご質問ください。」
いずれのパターンでも、原則の手数料と特例上限の両方の金額を明示し、依頼者に比較検討の余地を残すことが重要だ。
媒介契約書の特約条項記載文言テンプレート
媒介契約書には、特例の適用と合意した手数料の金額を明記する。国土交通省の標準媒介契約約款に準拠した記載が推奨される。
記載例:
「本件媒介に係る報酬は、宅地建物取引業法第46条第1項に基づく国土交通大臣告示の低廉な空家等の媒介の特例規定を適用し、金○○万円(消費税別)を上限とすることに甲乙合意する。」
手数料に関するトラブルは宅建業法違反として行政処分の対象となるため、合意内容を書面で記録として残すことが重要だ。
⇒媒介契約書の基礎知識と記載ルールの詳細
特例適用に合意が得られなかった場合の対応
依頼者が特例適用に合意しない場合、通常の計算式に基づく手数料で媒介契約を締結する。合意の強制はできない。合意なしに特例上限額を請求した場合は宅建業法違反だ。
合意が得られなかった場合の選択肢としては、以下がある。
- 通常計算式の上限額で媒介契約を締結する
- 受任を辞退する(低価格帯で採算が取れない場合)
- 手数料の金額を交渉する(特例上限と原則計算の中間点で合意する等)
両手仲介の場合の上限額
両手仲介(売主・買主の双方を仲介する場合)では、売主と買主それぞれから最大33万円(税込)を受領できる。両手仲介の仲介手数料の上限は合計で最大66万円(税込)だ。
例: 500万円の物件を両手仲介した場合
| 項目 | 原則の手数料 | 特例適用後 |
|---|---|---|
| 売主から | 23.1万円(税込) | 最大33万円(税込) |
| 買主から | 23.1万円(税込) | 最大33万円(税込) |
| 合計 | 46.2万円 | 最大66万円(+19.8万円) |
ただし、両手仲介の場合も売主・買主それぞれの合意が必要だ。売主が合意し買主が合意しなかった場合、買主分は原則計算式が適用される。
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賃貸の仲介手数料も改正|長期空室特例とは
2024年7月の改正では賃貸にも特例が新設された。 長期間空室の賃貸物件について、貸主から家賃2か月分+消費税を上限に受領可能に。借主の負担は原則変わらない。「長期間」の明確な期間基準は告示上定められていないが、国土交通省が告示改正に際して公表した解説資料(「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額の改正概要」、2024年6月)では「少なくとも1年を超えるような期間にわたり居住者が不在」を目安として示している。
長期空室物件の手数料特例の内容
長期間空室となっている賃貸物件(現に長期間にわたり居住の用に供されていない物件)について、貸主から通常の1か月分に加え、さらに1か月分の仲介手数料を受領できるようになった。貸主からの受領上限が家賃2か月分+消費税だ。
借主からの受領は従来通り家賃0.5か月分+消費税が原則であり、借主の負担は増えない。
「長期間」の定義基準
告示上、「長期間」の明確な期間基準(○か月以上等)は定められていない。国土交通省が告示改正に際して公表した解説資料(「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額の改正概要」、2024年6月)では「少なくとも1年を超えるような期間にわたり居住者が不在となっている」物件を目安として示しているが、最終的には個別の物件状況に応じた判断となる。適用の可否が不明確な場合は、各都道府県の宅地建物取引業担当課に確認されたい。
具体的な計算例
例: 家賃8万円の長期空室物件
| 項目 | 従来の上限 | 改正後の上限 |
|---|---|---|
| 貸主からの受領 | 家賃1か月分=8.8万円(税込) | 家賃2か月分=17.6万円(税込) |
| 借主からの受領 | 家賃0.5か月分=4.4万円(税込) | 家賃0.5か月分=4.4万円(税込)※変更なし |
| 仲介会社の収入合計 | 最大13.2万円 | 最大22万円(+8.8万円) |
貸主からの増額分(1か月分)にも、売買と同様に媒介契約時の事前合意が必要だ。
賃貸の改正が入居者に与える影響
借主の手数料負担は原則として変わらないため、入居者への直接的な影響は限定的だ。ただし、貸主からの手数料増額により、長期間放置されていた空室物件の仲介に仲介会社が積極的に取り組むインセンティブが生まれる。結果として、借主にとっては物件の選択肢が広がる可能性がある。
具体的には以下のような変化が想定される。
- 物件情報の露出増加: 従来はポータルサイトに掲載すらされなかった長期空室物件が、広告予算の確保により露出する
- 内見対応の改善: 手数料増額分を内見時のクリーニングや簡易修繕に充てることで、物件状態が改善される可能性がある
- 成約までの期間短縮: 仲介会社が積極的に客付けに動くことで、借主にとっても希望条件に合う物件が早く見つかる
管理会社・賃貸仲介会社の実務対応
賃貸の特例を活用するために、以下の実務対応が求められる。
- 長期空室物件のリスト化: 管理物件のうち、空室期間1年以上の物件を抽出し、特例適用の可否を判定する
- 貸主(オーナー)への特例説明: 手数料増額分が仲介活動の強化(広告出稿・内見対応等)に充てられることを説明し、合意を取得する
- 管理委託契約書の整備: 特例適用に関する条項を管理委託契約書に追加する
貸主への説明トーク例:
「○○様の物件は○か月間空室が続いております。2024年7月の法改正により、長期空室物件については仲介手数料を家賃2か月分まで受領できる特例が設けられました。増額分はポータルサイトへの追加掲載や内見時の対応強化に充て、早期入居を目指します。」
仲介手数料の改正に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 改正前に媒介契約を締結した場合、改正後の特例は適用される?
改正後の特例が適用されるのは2024年7月1日以降に締結された媒介契約だ。改正前の契約には原則として改正前のルールが適用される。
Q2. 800万円超の物件には影響がある?
影響はない。従来通り「売買価格×3%+6万円+消費税」の速算式で算出される上限額が適用される。
Q3. 空き家じゃなくても特例は適用される?
適用される。800万円以下の宅地・建物であれば、居住中・更地・投資用物件を問わず対象だ。
Q4. 仲介手数料は値引き交渉できる?
法定の金額は「上限」であり、この範囲内で自由に設定できる。値引き交渉は法律上問題ないが、仲介会社のサービスの質に影響する可能性はある。
⇒仲介手数料の相場と仕組みについて詳しくはこちら
Q5. 両手仲介の場合、上限額はどうなる?
売主・買主それぞれから最大33万円(税込)を受領できる。両手仲介の上限は合計66万円(税込)だ。
Q6. 不動産投資物件にも特例は適用される?
売買価格が800万円以下であれば投資用物件でも適用される。ワンルームマンションや地方の収益物件も対象だ。なお、投資物件の場合、仲介手数料は不動産所得の必要経費(売却時は譲渡費用)として計上できるため、特例適用による手数料増額分も経費算入が可能だ。
Q7. 合意なしに手数料を上げられたらどうする?
特例適用には媒介契約時の事前合意が必須であり、合意なしの請求は宅建業法違反だ。まず仲介会社に確認し、解決しない場合は各都道府県の宅建業担当課に相談できる。
Q8. 今後さらに改正される可能性はある?
業界団体から800万円超への拡大要望が出ている。ただし2026年6月時点で具体的な改正予定は公表されていない。
まとめ
2024年7月施行の宅建業法改正により、800万円以下の物件の仲介手数料上限は売主・買主双方とも33万円(税込)に引き上げられた。適用には媒介契約時の事前合意が必須だ。
改正のポイントを整理すると以下の通りだ。
- 対象: 800万円以下の宅地・建物(空き家に限らない)
- 上限額: 30万円+消費税(税込33万円)、売主・買主双方
- 適用条件: 媒介契約時の事前合意が必須
- 賃貸: 長期空室物件について貸主から家賃2か月分まで受領可能
- 施行日: 2024年7月1日
売主・買主は媒介契約時に手数料の金額を確認し、納得した上で合意することが重要だ。仲介会社は、原則計算式と特例上限の両方を提示して依頼者に比較検討の余地を残すことが、トラブル防止と信頼構築の鍵となる。