電磁的方法とは?具体例・電磁的記録との違いと不動産取引の注意点
不動産仲介の基礎知識

目次
電磁的方法とは、電子情報処理や通信などを用いて情報を扱う方法を指す言葉です。電子メールでの送信や、Webサイトからファイルをダウンロードして受け取る方法などが具体例になります。ただし、法律や手続きによって対象と条件が異なり、「電子的に送ればどの手続きでも有効」という意味ではありません。
似た言葉の「電磁的記録」は記録された情報、「電子契約」は契約を結ぶ行為・仕組みを指します。まず用語を分け、そのうえで対象の手続きに必要な条件を確認しましょう。
この記事では、前半で一般的な意味を整理し、後半で不動産取引の書面を電子交付するときの注意点を解説します。
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電磁的方法とは?意味と身近な具体例
電磁的方法は、主に「どのような手段で情報を扱うか」を表す言葉です。紙を手渡す代わりに、電子メールやオンラインの仕組みを使う場面などで登場します。
電子メールやWebからのダウンロードなどの方法
情報の提供を例にすると、ファイルをメールに添付して送る、相手がWebサイトからファイルをダウンロードする、電子データを記録した媒体を渡す、といった方法があります。
ただし、これらがすべての法律上の手続きで認められるわけではありません。手続きの根拠となる法律・省令などが、使用できる方法や条件を定めている場合があります。利用サービスの名称だけで判断せず、実際の送受信や保存の仕組みを確かめる必要があります。
メール添付のPDFを例に「方法」と「記録」を分ける
例えば、説明資料のPDFを電子メールに添付して相手へ送る場面では、PDFが「記録された情報」、メール送信が「情報を提供する方法」に当たります。
見る対象 | 例 | 用語を理解するための整理 |
|---|---|---|
記録された情報 | 説明資料のPDF | 電磁的記録に当たるものの例 |
情報を届ける手段 | PDFを添付したメールを送る | 電磁的方法に当たるものの例 |
行う手続き | 書面に記載すべき事項を相手へ提供する | 根拠法令の要件を別に確認する |
これは言葉を理解するための例です。PDFを送ったという事実だけで、法律上の書面交付が完了したと判断できるわけではありません。
同じ言葉でも法律・手続きで対象が異なる
例えば、個人情報保護委員会のFAQには、個人情報保護法第41条第8項における電磁的方法として、メールや、受信者を特定して情報を伝えるSNSのメッセージ機能などの説明があります。これは、その条項の文脈での説明です。出典:個人情報保護委員会 FAQ Q14-19
この説明をそのまま不動産の重要事項説明書の交付へ当てはめ、「SNSなら何でもよい」とすることはできません。同じ用語でも、何を、誰に、何のために行う規定なのかをセットで読みましょう。
電磁的記録・電子契約・電子署名との違い
電子化に関する用語は、対象にしているものが異なります。方法、記録、契約、署名を分けると、必要な手続きや機能を整理しやすくなります。
用語 | 主に表すもの | 具体例・注意点 |
|---|---|---|
電磁的方法 | 情報を扱う方法 | メール送信、Webからのダウンロードなど。認められる方法は規定ごとに確認 |
電磁的記録 | 電子的に記録された情報 | 電子ファイルなど。紙に印刷したものとは区別する |
電子契約 | 電子的な手段による契約の締結 | 契約の成立と、法定書面の交付は別に確認する |
電子署名 | 作成者を示し、改変の有無を確認するための措置 | 電子署名法上の定義・要件がある。画像の印影と同一視しない |
電磁的記録は電子的に記録された情報
電磁的記録は、コンピューターなどで扱うために記録された情報を指します。PDFなどは身近な例ですが、特定の拡張子だけを指す用語ではありません。
電子署名法では、人の知覚によって直接認識できない方式で作られ、電子計算機による情報処理に用いられる記録として定義されています。画面に文字として表示できることと、記録自体が紙に書かれていることは区別します。出典:電子署名及び認証業務に関する法律 第2条
電子契約は契約を締結する行為・仕組み
電子契約は、電子的な手段を使って契約を結ぶことを指します。一方、電磁的方法による提供は、書面に記載する事項などを電子的な方法で提供することです。
同じサービス内で行える場合でも、契約への合意、書面の交付、説明、本人確認などは、それぞれの要件を確認しなければなりません。資料を送信しただけで、契約の成立や必要な説明まで終わったと考えないようにしましょう。
電子署名は本人性や改変確認に関係する仕組み
電子署名法上の電子署名は、誰が作成した情報かを示すことと、情報が改変されていないかを確認できることに関わる措置です。ファイルに氏名を入力することや、印影の画像を貼ることが、必ずこの要件を満たすとは限りません。
電子署名の法的な扱いは、使う仕組みと法定の要件によって異なります。「電子署名付き」という表示だけで、すべての法的な問題が解決するわけではありません。出典:電子署名法 第2条・第3条

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使える方法と必要な条件は何で決まるか
対象の法律、手続き、書面、相手を特定してから、必要な条件を確認します。「承諾があれば何でも可能」「保存できれば十分」と、条件の一部だけで判断しないことが大切です。
対象の法律・書面・相手を確認する
最初に、何を電子化したいのかを具体的にします。商品案内を送ること、法定の書面を交付すること、契約に合意することでは、確認する規定が異なります。
次に、誰へ提供する書面なのかを確認します。不動産取引でも、媒介契約の依頼者、買主・借主、売買契約の当事者では、書面を受け取る立場が違います。社内の担当者や相手の営業窓口に送れば足りると決めつけず、必要な相手を確認してください。
承諾・受領・保存などの要件を分けて確認する
次の項目は、制度を調べるときの確認観点です。すべての電磁的方法に一律に課される要件という意味ではありません。
確認観点 | 確かめること |
|---|---|
利用できる方法 | メール、ダウンロード、記録媒体などのどれが認められるか |
相手の承諾 | 必要か、誰から、何を説明して、どの方法で得るか |
提供時点 | 説明前か、契約の締結・成立後かなど |
受領・閲覧 | 相手に到達し、内容を確認できるか |
保存・出力 | 相手が保存し、必要に応じて紙へ出力できるか |
改変確認 | 改変の有無を確認するための措置が必要か |
要件が定められている事項と、トラブルを防ぐために推奨される運用も分けましょう。推奨される項目を法定の義務と書き換えたり、義務を任意の工夫として扱ったりしないことが大切です。
電話・FAX・チャットを名前だけで判断しない
電話で説明する、FAXで紙を送る、チャットでリンクを渡すという行為を、通信機器を使っているという理由だけで、対象手続きの電磁的方法と判断することはできません。
例えば、チャット上に一時的に表示されるだけの情報と、相手が保存・出力できるファイルでは仕組みが異なります。対象規定で求められる状態を、相手側の端末で実現できるかを確認しましょう。
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不動産取引での電磁的方法による提供とは
ここからは、不動産会社が宅地建物取引業法に基づく書面を電子交付する場面を扱います。2022年5月18日から、重要事項説明書などの電磁的方法による提供が可能になりました。対象や要件は、国土交通省のマニュアル・FAQに沿って確認します。出典:国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」
書面の電子交付・電子契約・IT重説は別の手続き
IT重説を実施することと、重要事項説明書を電子交付することは別です。説明の方法と書面の渡し方を分けて準備します。
手続き | 何を行うか | 混同しやすい点 |
|---|---|---|
書面の電子交付 | 書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供する | 画面共有で見せただけでは交付にならない |
IT重説 | 映像・音声を使って重要事項説明を行う | 書面の事前交付など、必要な準備は別に行う |
電子契約 | 電子的な仕組みで契約を締結する | 法定書面の交付や重要事項説明まで自動で満たすわけではない |
IT重説の進め方はIT重説の解説、契約周辺の電子化は不動産の電子契約でも確認できます。
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対象となる書面と契約形態を確かめる
主な対象を、提供時点と合わせて整理すると次のようになります。
書面 | 主な対象 | 提供のタイミング |
|---|---|---|
34条の2書面 | 売買・交換の媒介契約に関する書面 | 媒介契約の締結後、遅滞なく |
35条書面 | 重要事項説明書 | 重要事項説明を行う前 |
37条書面 | 契約成立時に交付する書面 | 契約の締結・成立後、遅滞なく |
34条の2の規定は、34条の3により売買・交換の代理契約にも準用されます。賃貸借の媒介契約を、この34条の2書面と同一に扱わないようにします。出典:宅地建物取引業法 第34条の2・第34条の3
また、37条書面の交付対象は、自ら当事者になる場合、代理する場合、媒介する場合で異なります。媒介の場合は契約の各当事者が対象です。35条書面では買主・借主など、対象の書面に応じた相手から承諾を得る必要があります。出典:国土交通省FAQ Q12・Q19
電子交付と対面説明などを組み合わせることもある
電子交付を選んだからといって、説明も必ずオンラインにする必要はありません。対面で説明し、書面は適切な手順で電子交付する組み合わせもあります。反対に、IT重説を行い、紙の書面を事前に交付する方法もあります。
顧客が利用できる端末、画面の見やすさ、保存や操作の負担を確認し、説明と交付をそれぞれ選びましょう。出典:国土交通省FAQ Q4・Q8
不動産会社が電子交付を行う前に確認すること
不動産取引の電子交付では、事前の承諾だけでなく、書面の要件や提供後の確認も必要です。送信した側の操作完了ではなく、相手が適切に受け取り、確認・保存できるところまで準備します。
相手の意向・受領環境を確かめる
相手が電子交付を希望するかに加え、利用する端末、メールやサービスへのアクセス、ファイルの表示、保存、改変確認に対応できるかを確認します。
スマートフォンでPDFを開けるだけでは、必要な操作をすべて行えるとは限りません。例えば、電子署名の確認に使う機能が端末やアプリによって使えない場合があります。実際に使う環境で確かめましょう。相手から電子化を希望された場合でも、必要な承諾取得は省略できません。出典:国土交通省実施マニュアル 3-1(1)、同FAQ Q11
方法やファイル形式を示して承諾を得る
利用する電磁的方法の種類・内容と、ファイル形式を事前に示して承諾を得ます。承諾の対象となる取引・書面も特定します。書面の種類を明示すればまとめて承諾を得られる場合がありますが、将来の不特定の取引まで一括して扱うことはできません。
国交省FAQでは、承諾取得に法定様式はない一方、承諾年月日、対象となる取引・書面、提供方法、ファイル形式、拒否の申出方法などを含む例が示されています。承諾の記録は紙、または紙に出力できるファイル形式で取得します。単にブラウザ上に表示されたというだけでなく、記録を保存・出力できるかを確認してください。出典:国土交通省FAQ Q13~Q16・Q28
承諾後に、提示した提供方法やファイルへの記録方式を変更する場合は、変更後の内容で改めて承諾を得る必要があります。例えば提供手段を変更するときは、最初の承諾のままで進めず、変更内容と相手の利用環境を確認しましょう。出典:国土交通省実施マニュアル 3-1(1)⑤、同FAQ Q3
保存・印刷・改変確認などの要件を満たす
国交省マニュアルでは、電子書面について、相手が出力して紙の書面を作成できること、改変の有無を確認できる措置を講じることが要件として示されています。35条書面・37条書面では宅建士の記名も必要です。
改変防止措置の例としては、電子署名やタイムスタンプが示されています。単に編集しにくいPDFに変換しただけで、必要な措置を満たすと判断しないようにしましょう。また、宅建士の記名そのものには、氏名を判別できる印字でもよいとされていますが、これは改変防止措置が不要という意味ではありません。出典:国土交通省実施マニュアル 3-1(2)、同FAQ Q21・Q24
提供後に受領・内容・保存を確認し履歴を残す
提供したことを通知し、相手に書面が到達したか、開いて内容を確認できるかを確かめます。ダウンロードリンクを送っても、相手がダウンロードしていない場合は提供したことになりません。重要事項説明では、説明前に要件を満たした35条書面を交付しておきます。
改変の有無の確認方法を説明し、相手に実際の確認を依頼することも必要です。保存の必要性・方法を説明することも推奨されています。国交省FAQは、宅建業法に電子書面の保存についての規定はないとしたうえで、マニュアルの保存に関する説明を参照するよう案内しています。「保存が大切」という実務上の説明と、法律上の保存義務・保存期間は区別してください。出典:国土交通省実施マニュアル 3-1(3)・(4)、同FAQ Q19・Q27・Q29・Q33

【不動産会社の方へ】承諾・交付に必要な記録は、対象手続きの要件に沿って管理しましょう。その前後の日常的な接客履歴を共有したい方は、Facilo CRMの機能をご確認ください。
社内では、誰が承諾を確認し、いつどの書面を提供し、受領確認で問題がなかったかを追えるようにします。トラブル時に紙へ切り替える手順や、書面に修正が生じた場合の再提供も含めて運用を決めましょう。35条書面の修正では、修正点を明示し、改めて改変防止措置を施して再提供する必要があります。出典:国土交通省FAQ Q20・Q26
【売り仲介の担当者へ】売主への販売活動の情報共有を整えたい方へ。売主マイページやレポートを使う運用は、物件売却クラウドの資料で確認できます。
不動産取引の電磁的方法についてよくある質問
不動産の書面はPDFをメール添付すれば要件を満たす?
添付しただけでは判断できません。対象書面、相手の承諾、ファイルの要件、提供時点、受領確認などを満たす必要があります。特に、改変の有無を確認する措置や、相手が保存・出力できる環境を確認しましょう。
不動産の書面交付は口頭や電話だけで代替できる?
宅建業法上必要な書面の交付を、口頭や電話による説明だけで代替することはできません。電話は意向や受領状況の確認に使う場合があっても、書面に記載すべき事項を適切に提供する手続きとは分けて考えます。
不動産の電子交付を断られたらどうする?
電子交付を強制せず、紙の書面を交付する方法に対応します。一度承諾した後でも拒否の申出がある場合を想定し、その方法や切り替え手順をあらかじめ案内しておきます。口頭の拒否を受けて任意に紙へ切り替えることも可能ですが、記録が残る形で受領することが望ましいとされています。出典:国土交通省FAQ Q20
不動産の電子交付には電子契約システムが必須?
特定の電子契約サービスを利用すること自体が一律に必須というわけではありません。採用する方法で、対象書面の電子交付に必要な条件を満たすことが必要です。機能名だけでなく、承諾取得、改変確認、提供、保存・出力を実際に行えるかを確認します。
用語の意味を押さえ、対象の手続きに合った方法を選ぼう
電磁的方法は情報を扱う手段、電磁的記録は記録された情報を指す言葉です。電子契約や電子署名とも分けて考え、法律・書面・相手・条件の順に確認しましょう。
不動産取引では、電子交付とIT重説、契約の締結は別の手続きです。国土交通省のマニュアル・FAQと対象法令に沿い、相手が無理なく受け取り、確認できる運用を整えることが大切です。
不動産会社は、契約前の情報共有も整えよう
契約書面の電子化と合わせて、検討中の物件情報や日常の接客履歴の共有を見直すと、顧客対応全体の改善を考えやすくなります。法定書面の交付を担う仕組みと、日々の提案・接客を支える仕組みは、それぞれ必要な機能を確認してください。
不動産仲介の情報共有を、検討段階から整えたい方へ。Faciloは電子契約サービスではなく、顧客情報・接客履歴の管理や物件提案などを支援するサービスを提供しています。書面の電子化と合わせて日常の接客を見直す際に、対象の機能をご確認ください。
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執筆:Facilo編集部/制度・製品情報の確認日:2026年10月7日
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