不動産の電子契約とは?売買・賃貸の流れ、注意点とサービスの選び方
DX・システム

目次
不動産の売買や賃貸でも、電子契約を利用できます。ただし、契約を結ぶこと、重要事項説明をすること、法定書面を電子データで届けることは、それぞれ別の手続きです。契約書にオンラインで署名できれば、すべての手続きが終わるわけではありません。
導入を進めるには、まず自社が扱う契約と書類を整理し、相手の承諾から書面の交付・保存までの流れを決める必要があります。この記事では、不動産会社の導入担当者に向けて、対象書類、売買・賃貸の手順、費用と注意点、4サービスの比較を解説します。売主・買主・貸主・借主の方は、取引の流れとよくある質問をご覧ください。
電子契約の導入とあわせて、顧客情報や対応履歴の管理も見直したい不動産会社へ。FaciloのCRM機能を、サービス資料で確認できます。
不動産の電子契約とは?書面の電子交付・IT重説との違い
電子契約は契約を結ぶ方法、電子交付は書面を届ける方法、IT重説は重要事項説明を行う方法です。3つを分けて考えると、導入するシステムに必要な機能と、不動産会社が行うべき確認が整理できます。
電子契約・電子交付・IT重説は、それぞれ何をする手続きか
電子契約では、紙の契約書を取り交わす代わりに、電子データを用いて契約を締結します。電子契約サービスで文書を送り、相手が内容を確認し、電子署名などの操作を行う方法がその一例です。
電子交付は、法律で交付が求められる書面について、所定の条件を満たして電子データを提供することです。不動産取引では、重要事項説明書や契約成立後に交付する書面などが該当します。契約書とは別の書類も含むため、「電子契約書を送った」という事実だけでは交付義務を果たしたか判断できません。
IT重説は、テレビ会議などで宅地建物取引士が重要事項説明を行うことを指します。紙の重要事項説明書を先に郵送し、説明だけをオンラインで行うことも可能です。反対に、書面を電子交付して、説明は対面で行う組み合わせもあります。国土交通省の実施マニュアルでも、書面電子化とIT重説を区別しています。

出典:国土交通省の実施マニュアル・FAQをもとに作成
2022年の法改正で何が変わったのか
2022年5月18日から、宅建業法に基づく重要事項説明書、契約締結時の書面、媒介契約に関する書面などの電子交付が可能になりました。宅建士の押印が不要になった一方、必要な記名や説明、書面の交付そのものがなくなったわけではありません。
電子交付には、受け取る人の承諾や、書面として出力できること、改変の有無を確認できることなどの条件があります。相手が電子交付を希望しない場合に備えて、紙で渡す運用も用意します。
契約の効力と、電子署名で証明することの違い
契約は原則として当事者の意思が合致することで成立し、特別な定めがある場合を除き、書面や押印は成立の必須条件ではありません。これは政府の「押印についてのQ&A」でも示されています。ただし、定期借家など、法律が方式を定める契約は別に確認が必要です。
電子署名は、電子文書を誰が作成したか、内容が変更されていないかを確かめるための仕組みです。電子署名法では、一定の要件を満たす本人の電子署名がある電子文書について、真正に成立したものと推定する規定があります。契約を結ぶ権限や法定手続きまで自動的に保証する制度ではないため、名義・権限・必要書類を併せて確認しましょう。
契約の電子化をきっかけに、営業全体の進め方も見直したい方へ。Faciloを活用した不動産会社の取り組みを、導入事例集で紹介しています。
電子契約・電子交付で扱える不動産の書類と対象外の確認
電子化する範囲は、「売買か賃貸か」だけでなく、誰との、どの契約・書類かで決まります。売買仲介の書類、入居者との賃貸借、オーナーから受ける管理業務を分けて整理しましょう。
売買仲介:媒介契約書・登録証明書・重要事項説明書・37条書面
売買仲介で主に確認する書面は次のとおりです。電子交付には、提供先の事前承諾など、書類ごとの条件があります。改変の有無を確認する措置が必要なのは、媒介契約書面・35条書面・37条書面です。REINS登録証には、この措置は求められていません。国交省・書面電子化と4種の書面の取扱い
書類 | 何を伝える書面か | 主な提供先 | 電子交付する時期・確認点 |
|---|---|---|---|
媒介契約書面(34条の2) | 仲介の依頼内容、契約の種類、報酬など | 仲介の依頼者 | 媒介契約の締結後、遅滞なく交付。法定の対象は売買・交換の媒介であり、賃貸の媒介へ一律に適用しない |
指定流通機構への登録を証する書面 | REINSへの登録を証明する内容 | 登録対象物件の媒介依頼者 | 登録後、遅滞なく交付。登録証明のデータの取得・提供方法を確認する |
重要事項説明書(35条書面) | 物件や取引条件など、契約判断に必要な事項 | 売買では買主 | 重要事項説明の前に、必要な措置を施した書面を提供し、相手が取得・確認できる状態にする |
契約締結時の書面(37条書面) | 成立した契約の内容 | 仲介では売主・買主の双方 | 売買契約成立後、遅滞なく交付。要件を満たす売買契約書が兼ねる場合もある |
35条書面と37条書面は、交付する目的もタイミングも異なります。売買契約書を37条書面として使う場合も、必要事項と宅建士の記名、交付先、交付の時期を確認します。「契約書」というファイル名だけで適合を判断しないことが大切です。国交省FAQ(Q12・19・34など)
媒介契約書面についても、電子交付する書類と方法を示して依頼者の承諾を取り、締結後に取得・保存できる形で渡します。一般・専任・専属専任の違いや記載事項、ひな形を確認したい場合は、媒介契約書の解説もご覧ください。
賃貸仲介・賃貸管理:入居者の契約・更新・解約と、オーナーの管理受託
賃貸では、入居者とのやり取りと、オーナーから管理業務を受託するときのやり取りが並行します。相手と根拠となる制度を分けると、必要な書類を取り違えずに済みます。
契約・手続きと相手 | 書類・記録 | 電子化するときの確認点 |
|---|---|---|
入居者との新規の賃貸借 | 重要事項説明書、賃貸借契約書、37条書面など | 仲介では借主への説明前の35条書面と、契約後の貸主・借主への37条書面を区別。契約書が37条書面を兼ねる場合も要件を確認 |
入居者との定期借家 | 定期建物賃貸借契約と、更新がないこと等の事前説明書面 | 契約を電磁的記録で行うことが可能。契約書とは別の事前説明書面も、借主の承諾を得て電子提供できる。説明を省略しない |
入居者との更新・再契約 | 更新合意、変更条項、再契約書など | 普通借家の更新と定期借家の再契約を区別。手続きの内容や仲介の有無に応じて必要書類を判断する |
保証会社・連帯保証人との手続き | 保証委託契約、保証契約等 | 賃貸借とは当事者や書類が異なる。保証の方式・条件、必要な承諾・署名者、保証会社が受け付ける方法を確認 |
入居者との契約終了 | 解約の通知、必要に応じた合意解約の書類、受領記録 | 通知と双方の合意を区別。誰から誰へ伝えるか、方式・期限、到達の確認、記録の保存を決める |
オーナーとの管理受託 | 管理受託契約の締結前説明書面・締結時書面 | 賃貸住宅管理業法上の登録業者の業務として確認。説明の相手・交付先は委託するオーナーで、入居者向け35条・37条書面とは別 |
定期借家には更新がなく、引き続き貸し借りする場合は再契約を検討します。電子化しても、契約前に更新がないことなどを説明する手続きは残ります。国交省の定期賃貸住宅標準契約書では、契約と事前説明書面の電子化をそれぞれ整理しています。
契約終了の扱いも一律ではありません。たとえば賃貸住宅標準契約書は借主からの解約申入れを定めていますが、これはひな形であり、すべての契約に同じ条件がそのまま適用されるものではありません。実際の契約条項と適用法令を確認し、電子メールやフォームを使うなら、所定の通知先への到達を確認できる運用にします。すべての解約に電子署名付きの合意書が必要、という扱いにはしません。
管理受託では、登録業者に求められる締結前の説明と、締結後の書面交付を分けます。締結前説明には相手が一定の専門家である場合などの例外があり、適用対象の確認も必要です。電子交付を選ぶ場合はオーナーの承諾、出力・改変確認等の条件を満たします。詳しくは国交省・賃貸住宅管理業者の業務と制度ハンドブックをご確認ください。
公正証書・金融機関への提出など、別の手続きが必要なケース
事業用定期借地権の設定契約は公正証書によることが必要です。通常の電子署名サービスで署名するだけでは、公正証書の作成に代えることはできません。
一方、公正証書が必ず紙で作られるという理解も現在は正確ではありません。2025年10月から公正証書作成のデジタル化が始まり、指定された公証人による電子データでの作成や、条件を満たす場合のウェブ会議による手続きが案内されています。日本公証人連合会・公正証書の電子化
このほか、融資や登記のために提出する書類、金融機関や取引先が指定する手続きは個別に確認します。「法令上電子化できること」と「今回の相手・サービス・提出先で使えること」を分けて判断しましょう。
不動産の電子契約の流れ【売買・賃貸】
仲介取引では、35条書面を説明前に提供し、37条書面を契約成立後に交付する順序が基本です。ここでは1件の売買・新規賃貸を進めるときの実務を、送信側と受信側の役割を交えて説明します。
共通の準備:相手への説明・電子交付の承諾・本人や権限の確認
最初に不動産会社から、電子化する書類、提供方法、ファイル形式、閲覧・保存に使う環境を説明します。相手が利用できるかを確かめ、宅建業法上の書面の電子交付への承諾を、相手から紙の書面やメール等で取得・保存します。Web上で承諾してもらう場合は、その記録を紙に出力可能なファイル形式で取得できることを確認します。口頭の承諾を担当者が社内メモに残すだけでは代えられません。
提供方法やファイル形式を変更するときは、変更後の内容で改めて承諾を得ます。契約内容への同意と、書面を電子データで受け取る承諾は別です。複数の書類についてまとめて承諾を得る場合も、対象を明らかにします。国交省マニュアル・承諾の取得
送信側は、書類を作成して社内確認を済ませ、宛先、必要な署名者、署名順を設定します。共同仲介ではどの会社が送るか、法人・代理人が関わる場合は誰に締結権限があるかも整理します。不動産会社がサービスの送信操作をする場合でも、その会社が売買・賃貸借の当事者になるとは限りません。
受信側には、届くメールの差出人、操作する書類、問い合わせ先をあらかじめ案内します。迷惑メールに入った場合や書類を開けない場合の連絡方法を決めておくと、当日の中断を減らせます。
本人や代理権限の確認も必要です。宅建業者による不動産の売買とその代理・媒介では、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認への対応を別途確認します。電子署名サービスへのログインだけで、必要な確認がすべて済むとは限りません。賃貸にも売買と同じ法的義務が一律に課されるという意味ではありませんが、本人・権限の確認はトラブル防止のために行います。国交省マニュアル・本人確認等
売買の流れ:重要事項説明の前後と、契約締結後に行うこと
売買仲介では、主に次の順序で進めます。売却依頼時などの媒介契約書面や、REINS登録後の登録証明書は、それぞれの段階で先に交付しておきます。
- 契約条件を調整し、準備と承諾を済ませる。 取引条件、関係者、使用する書類とサービスを確定し、電子交付への承諾を得ます。
- 説明前に35条書面を提供する。 必要な記名と改変確認の措置を施した書面を送り、買主が取得して内容を確認できることを確かめます。改変の有無を確認する方法も説明し、買主にも確認してもらいます。
- 宅建士が重要事項説明を行う。 IT重説では、映像・音声が明瞭で双方向にやり取りでき、宅建士証の提示を確認できる環境を整えます。疑問に回答し、説明の途中で通信障害が起きた場合は中断して対応します。
- 契約内容を確認して締結する。 売主・買主が最終の契約内容を確認し、利用サービスに応じた認証・署名操作を行います。送信側は必要な人の手続きが完了したかを確認します。
- 契約成立後、37条書面を交付して保存を確認する。 売主・買主それぞれが、確定した書面を取得し、閲覧・保存できる状態になっているかを確認します。

出典:国土交通省の実施マニュアル・FAQをもとに作成
重要なのは、契約の署名画面を開く操作と、法定書面の交付を区別することです。契約書が37条書面を兼ねる場合も、契約成立前の確認用データを送っただけで、成立後の交付が済んだことにはなりません。サービスの完了通知と、法的な契約成立の判断も、契約条件を踏まえて確認します。
また、35条書面を説明時の画面共有だけで見せる方法や、改変確認の措置がまだない下書きを渡す方法では、適切な事前交付に代えられません。国交省FAQ(Q19・29・34)
販売活動中の反響や内見状況は、契約の手続きとは別に、売主へ継続して共有する情報です。契約直前に報告が集中しないよう、日頃から状況を見られる仕組みを整えることも有効です。
売主への報告も、いつでも状況が伝わる形に。
売買契約までの販売活動で、報告や資料の共有に手間がかかっていませんか。Faciloの物件売却クラウドでは、売主専用のマイページで情報を共有できます。
- 販売活動の反響データや報告書を、売主が確認できる形にまとめる
- 内見状況やスケジュールを共有し、日程の確認を進めやすくする
- 売主との日常の接点をつくり、次の提案につなげる
賃貸の流れ:新規契約と更新手続きを分けて考える
新規の賃貸仲介では、入居申込み、審査、保証条件などの調整を進めたうえで、必要書類と関係者を確定します。借主に説明前の35条書面を提供し、重要事項説明、契約締結、貸主・借主への37条書面の交付へ進む基本的な順序は、前項と共通です。
保証会社や連帯保証人が関わる場合は、賃貸借契約だけでなく保証関係の書類も確認します。誰がどの書類に署名するか、保証会社が指定する手続きは何か、順番をどう設定するかを送信側で整理し、それぞれの受信者に案内します。定期借家では、更新がないこと等の事前説明も別途行います。
更新手続きは、既存の契約を確認するところから始めます。期間延長だけなのか、賃料や保証条件の変更を伴うのか、新たな契約を結ぶのかで必要な対応が変わります。すべての更新に新規契約と同じ一連の手順が必須と決めつけず、普通借家の更新と定期借家の再契約も分けましょう。
オーナーとの管理受託は、前章で説明した賃貸住宅管理業法上の手続きとして整理します。この章の35条・37条書面の流れを、そのまま管理受託に当てはめないようにしてください。
賃貸仲介で、契約前の物件提案や内見調整にも手間がかかっているなら、Faciloの賃貸クラウドもご確認ください。顧客専用のマイページで、提案物件の比較・検討や内見予約のリクエストを進められます。
送信だけで終わらせず、受領・保存まで確認する
メールの送信履歴が残っていても、受け手がファイルを取得できていなければ、交付を終えたとは判断できません。送信側は、ダウンロードなどの取得状況と、書面を開いて確認できることを確かめます。受信側も、締結済みデータを保存し、後日見返せるか確認しましょう。
媒介契約書面・35条書面・37条書面を電子交付するときは、改変の有無を確認する方法と、後日変更されていないかを確かめるために必要な方法であることも説明します。送信側は利用サービスや端末に合わせて操作を案内し、受け手が理解できたか確かめたうえで、受け取った書面について実際に改変の有無を確認してもらいます。電子署名を使う場合の署名パネルでの確認などが一例です。スマートフォンでは確認できない場合もあるため、必要に応じてパソコンでの確認方法を案内します。国交省マニュアル・改変有無の確認方法
ダウンロード期限があるサービスでは、期限前に取得してもらう案内が必要です。交付した35条書面の記載を訂正する場合は、変更箇所を明らかにし、改変確認の措置を施した修正版を再提供します。国交省FAQ(Q19・26・27)
締結済みの契約内容を変更する場合は、ファイルの差し替えだけで済ませず、必要な当事者間の合意や変更手続きを確認します。元の契約と変更の記録を関連付けて保存し、旧版と確定版が混在しないよう、対象物件、書類の種類、版を管理しましょう。
不動産の電子契約のメリットと、導入にかかる費用
費用対効果は、減らせる郵送・印紙・作業の負担と、サービス料金・運用に残る手間を対比して考えます。売買と建物賃貸借では印紙税の前提も違うため、契約件数だけで効果を見積もらないことが大切です。
郵送・押印・保管の手間を減らし、遠方の相手とも進めやすくする
電子契約へ移すと、紙の印刷、製本、郵送、押印済み書類の返送、保管場所の確保といった作業を減らせます。遠方に住む売主や、来店時間を取りにくい借主とも、書類のやり取りを進めやすくなるでしょう。
ただし、条件調整、書類の内容確認、重要事項説明、本人・権限の確認は残ります。操作の問い合わせや紙への切替も考慮が必要です。「導入すればすべての契約が何日短くなる」と決めつけず、どの作業の待ち時間が長いのかを分けて見ると、改善を測りやすくなります。
印紙税がかからないケースと、もともと課税されない書類を分ける
電子データの契約書は、印紙税の課税対象となる文書に該当しません。ただし、紙の契約書を別途作成する場合は、その紙の文書が課税対象かを確認します。国税庁・電子契約に関する質疑応答
書類・作成形態 | 印紙税の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
電子データで作成する契約書 | 電子データ自体は課税文書に該当しない | 電子契約と併せて紙の課税文書を作成する場合は別途判断 |
紙の不動産売買契約書 | 課税対象。記載金額等により税額が異なる | 軽減措置の対象・期間を確認し、誰が何通作成・保有するかも整理 |
紙の建物賃貸借契約書 | 原則として課税対象外 | 「電子化で印紙税が減る」と一律に試算しない。土地の賃貸借や金銭消費貸借の内容を含む場合などは別途判断 |
たとえば、記載された契約金額が3,000万円の不動産売買契約書を紙で1通作成し、軽減措置の対象となる場合、印紙税は1万円です。軽減対象期間は2027年3月31日までとされています。この1通の例を、自社が負担する年間契約すべての削減額へそのまま掛け合わせず、実際に作る文書と負担を確認しましょう。国税庁・土地売買契約書、建物賃貸借契約書
月額・送信料・追加機能を含めて費用対効果を見る
比較する費用は、月額料金だけではありません。送信料、本人確認などの追加機能、既存システムとの接続、初期設定や社内研修の負担を含めます。契約1件に複数の書類を送る場合は、契約件数と課金される送信数が一致しない可能性もあります。
試算では、「月額固定費+送信等の変動費+オプション費+導入・運用の作業負担」を、印紙代、郵送代、印刷・製本費と、削減できる作業時間に対応させます。人件費換算した時間は、必ず現金支出がその分減るという意味ではありません。空いた時間を接客へ回すのか、残業を減らすのかも合わせて考えましょう。
紙での手続きが残る割合や、訂正して再送する件数も織り込みます。まず実際の数件で作業時間を測り、月間・年間へ広げて試算するほうが、自社の業務に合った判断ができます。
契約準備だけでなく、買主への物件提案にかかる手間も見直しませんか。Faciloの物件購入クラウドでは、提案物件をマイページにまとめ、顧客がどの物件を検討しているかを確認できます。
導入前に押さえたいデメリットと運用上の注意点
ここからは、主に不動産会社の導入・運用担当者向けです。電子化すると紙の作業は減りますが、送付先・権限・交付時期・保存を管理する責任は残ります。サービスの操作方法と合わせて、担当者の確認手順を決めましょう。
紙を希望する相手・操作に不慣れな相手への対応を用意する
相手が電子交付を承諾しない場合には、紙で交付します。一度承諾した相手が電子交付を受けない旨を申し出た場合の対応も必要です。紙への切替は、契約内容の変更や契約の取消しとは分けて扱います。国交省FAQ(Q20)
導入側が便利でも、受け手が端末を持っていない、文字を読みにくい、保存方法が分からないといった場合があります。案内文に問い合わせ先を入れ、事前に操作を試す時間を設けましょう。紙への切替時に、電子版と紙版で内容が食い違わないことも確認します。
誤送信・なりすまし・署名権限・書類の差替えに備える
次の表は、法令上必要な手続きを確実に行うための社内チェック例です。二人での確認や担当分担は運用上の提案であり、表のすべてがそのまま法定義務という意味ではありません。
失敗しやすい場面 | 確認すること | 担当の例 |
|---|---|---|
別の顧客や家族の宛先へ送る | 契約名義、本人への到達、メールアドレス、対象物件と添付書類 | 作成者と送信前の確認者 |
権限のない人が操作する | 法人の締結権限、代理権限、実際に操作する人と確認方法 | 営業担当・契約審査担当 |
説明前の書面が未取得 | 電子交付の承諾、35条書面の取得・閲覧、改変確認の措置と確認方法の説明、受け手による確認 | 交付担当・説明する宅建士 |
訂正前の書類で進める | 訂正内容、再提供した版、必要な再説明・合意 | 書類作成者・宅建士・契約当事者 |
契約後の交付や保存が漏れる | 必要な署名等の完了、37条書面の交付先、取得・保存状況 | 交付担当・保管担当 |
宛先を間違えた場合の連絡先や送信取消しの方法も、導入時に確認します。再送すれば済むケースばかりではないため、個人情報を含む書類が第三者へ渡ったときの社内連絡経路を決めておくと、初動で迷いにくくなります。
保管・検索・退会後の取り出しまで確認する
電子契約データの保管では、宅建業法上の書面交付と、税務上の電子取引データ保存を分けて確認します。法人・個人事業者が、紙なら保存義務のある契約書等に相当するデータを電子的に授受した場合には、電子帳簿保存法に沿ったデータ保存が必要です。
原則的な保存要件には、改ざん防止の措置、表示・出力できる環境、日付・金額・取引先での検索などがあります。ただし、検索要件の免除や猶予措置には条件があります。また、改ざん防止には事務処理規程の整備・運用などの方法もあり、タイムスタンプだけが唯一の方法ではありません。国税庁・電子取引データ保存の案内
サービスに保管できることだけで判断せず、退会・乗換え・担当者退職時に、何を取り出せるかを確認しましょう。契約書のPDFに加え、署名や合意の証跡、文書情報、検索用の情報をどの形式で残せるかが確認項目です。保存期間も、対象文書と自社に適用される法令・社内規程に沿って決めます。
共同仲介や社内の担当者間で、作業の分担を決める
複数の会社や部署が関わる場合は、承諾を得る人、書面を作る人、説明する宅建士、交付・受領を確認する人、保管する人を明らかにします。「相手の会社がやったと思っていた」という空白を作らないためです。
一方、日常の電話・メール・接客の履歴は、契約の証跡とは別に共有が必要です。顧客管理の役割を整理したい場合は、不動産CRMの機能と選び方も参考になります。顧客情報の管理と、法定交付・電子署名・税務保存に必要な仕組みを対応付けて設計しましょう。
「誰が、どのお客様に、どこまで対応したか」の共有にも課題があるなら、顧客管理の仕組みを合わせて見直せます。FaciloのCRMは、顧客と担当者の紐付けや接客履歴の確認に対応しています。
不動産向け電子契約サービスの選び方と4サービスの比較
比較の基準は、署名機能の数よりも、自社の書類と関係者で「承諾・説明・契約・交付・保存」を進められるかです。ここではクラウドサイン、電子印鑑GMOサイン、いえらぶサイン、PICKFORMを、同じ項目で比較します。掲載順は優劣や推奨順位を示すものではありません。
比較する前に、自社の契約と必要な機能を整理する
対象が売買、新規賃貸、更新、管理受託のどれかを決め、使っている書類を並べます。そのうえで、月間送信数、署名者の人数、遠隔での利用、共同仲介、保証会社との手続き、既存システムへの入力作業を整理しましょう。
必須条件を先に決めると、営業担当者への質問も具体的になります。たとえば「重要事項説明書を説明前に提供し、取得を確認する操作を見せてください」「退会前に契約書と証跡をまとめて取り出せますか」と尋ねれば、自社の業務で使えるかを判断しやすくなります。
クラウドサイン・GMOサイン・いえらぶサイン・PICKFORMを比較
次の表は2026年9月30日に確認した公式公開情報に基づきます。各行の①〜⑤は、対象契約・書面/承諾・受領確認/複数当事者・署名順/保存・解約時の取り出し/既存システムとの関係を指します。「要確認」は公開情報だけでは条件を確定できない項目であり、非対応という意味ではありません。
サービス | 公式情報で確認した内容 | 自社で確認するポイント |
|---|---|---|
クラウドサイン | ① 不動産売買・賃貸での利用を案内。 | ① 自社の法定書面を扱う手順。 |
電子印鑑GMOサイン | ① 不動産向けの利用を案内。 | ① 使用する画面・プランでの法定書面の手順。 |
いえらぶサイン | ① 賃貸・売買等の不動産取引向け。 | ① 自社の契約種別・書式が対象か。 |
PICKFORM | ① 35条書面に関する手続きから37条書面の締結・交付までのフローを案内。 | ① 売買・賃貸・管理受託それぞれの書類への適合。 |
機能の出典:クラウドサイン・不動産向け、複数宛先と送付順、解約時のデータ、GMOサイン・機能一覧、重要事項説明の操作例、いえらぶサイン、PICKFORM。機能の標準搭載範囲・対象プランが確定できない項目は、見積もりと試用で確認してください。
いえらぶサインは、クラウドサインやGMOサインとの連携も案内しています。そのため、4つを完全に独立した署名技術として比べるのではなく、契約準備から情報の引継ぎまでを含むサービスとして比較すると、自社に合う組み合わせを考えやすくなります。
料金は機能表と分けて確認します。次は代表プランの公開情報です。PICKFORMを除き、記載した金額は税別です。
サービス・代表プラン | 月額・契約期間 | 送信料・追加費用など | 確認日 |
|---|---|---|---|
クラウドサイン/Light | 月額11,000円。契約期間は当初1年、以後1年ごとの自動更新 | 送信1件220円。追加機能・上位プランの条件は別途確認 | 2026/9/30 |
電子印鑑GMOサイン/ライト | 年額契約の月額換算8,800円。月額契約は9,500円 | 契約印タイプ1件100円、実印タイプ1件300円。SMS送信等のオプションは別途 | 2026/9/30 |
いえらぶサイン | 今回確認した公式製品ページに現行の詳細料金表なし。契約期間とともに問い合わせ | 月間件数、連携範囲、採用する署名サービスを伝えて見積もりを確認 | 2026/9/30 |
PICKFORM/Standard | 月額固定費・契約期間は問い合わせ | 公式に署名あり200円/通、署名なし無料/通の記載あり。ただし同ページで税区分を確認できないため、見積もりで確認。追加ID料金の条件も確認 | 2026/9/30 |
料金の出典:クラウドサイン料金、GMOサイン料金、いえらぶサイン、PICKFORM・料金欄。無料プラン・お試しの条件と、継続的に業務で使う有料プランの条件は分けて確認しましょう。
実際の書類で試し、相手方の操作と社内確認まで確かめる
自社の条件を比較表に当てはめ、たとえば次のように試用候補と確認する操作を決めます。
- いえらぶCLOUDを利用中で、申込・管理情報の転記を減らしたい場合: いえらぶサインの連携範囲を確認し、普段使う情報を契約書へ反映する操作を試します。利用中の機能や契約により使える範囲が異なるため、自社の環境で確かめましょう。
- 物件ごとに契約関連の書類を整理したい場合: PICKFORMの物件別管理を候補とし、対象物件の書類や契約履歴を探し、PDFを取り出す流れが自社の運用に合うかを試します。解約時に取り出せる情報の範囲は別途確認します。
- 既存システムとの連携を重視する場合: クラウドサインやGMOサインを候補に、接続先・対象プラン・追加費用を照合します。そのうえで、今使っているシステムとの間で、どの情報を受け渡せるかを確認します。
掲載した代表プランで必要な機能をすべて使えるとは限らないため、見積もりでは機能の対象範囲も合わせて確認してください。
候補を絞ったら、個人情報を含まない試用用の書類を用意し、送信する担当者と受信する相手の両方を体験します。法定書面の提供・確認のほか、スマートフォンでの読みやすさ、訂正時のやり直し、署名順の変更、確定データの保存まで試してください。「法対応」という説明だけで判断せず、自社の一連の操作で交付漏れが起きないかを確かめることが大切です。
契約システムに加えて、顧客対応の基盤も整理したい方へ。
電子契約の機能と、日々の顧客管理で必要な機能を整理すると、自社に必要なツールを選びやすくなります。顧客一覧・担当者の紐付け・接客履歴など、FaciloのCRMで扱える内容を製品ページでご確認ください。
不動産会社が電子契約を導入・定着させる3ステップ
社内導入では、対象を決め、少数の契約で試し、差戻しや確認漏れを直してから利用範囲を広げます。システムを契約しただけで完了とせず、営業・契約審査・経理・管理担当が同じ手順で動ける状態を目指しましょう。
1. 対象業務・担当者・紙に切り替える条件を決める
まず、売買・賃貸・更新・管理受託のうち、最初に電子化する業務を決めます。書類ごとに、作成者、確認者、説明者、交付担当、保管担当を対応付け、月間の件数を調べます。
相手が電子交付を希望しない場合、必要な機器を用意できない場合、共同仲介先が対応できない場合など、紙へ切り替える条件も決めます。途中で切り替えるときは、すでに進んだ手続きと未完了の手続きを確認し、二重の署名依頼や交付漏れを防ぎましょう。
2. 社内と取引先への案内を用意し、対象を絞って試す
社内用には書類・担当・完了条件のチェックリストを、相手方用には必要な機器、届くメール、保存方法、問い合わせ先の案内を用意します。サービス提供会社の操作マニュアルを使う場合も、自社固有の確認や紙への切替方法を補いましょう。
試行中は、操作を説明した担当者とは別の人にも案内を読んでもらうと、分かりにくい表現を発見しやすくなります。顧客が不明点を残したまま署名操作へ進まないよう、質問を受け付けるタイミングも設けます。
3. 差戻し・確認漏れ・所要時間を見直し、利用を広げる
試行後は、利用件数だけでなく、紙への切替理由、訂正・再送の回数、操作の問い合わせ、交付・取得の確認漏れを振り返ります。所要時間も、社内の準備時間と相手の対応を待つ時間を分けて測ると、手順と案内のどちらを改善すべきか判断しやすくなります。
たとえば、送信自体は短くなっても訂正による再送が増えるなら、契約書の社内確認を見直す必要があります。取得漏れが続くなら、通知文面や説明前の確認方法を修正します。法定確認を省いて速くするのではなく、確認しやすい運用へ整えましょう。
電子契約以外にも入力の重複や情報共有の課題が見つかったら、契約前後の業務も棚卸しします。改善の優先順位を考える際は、不動産DXの進め方も参考にしてください。
社内の試行で、物件提案や追客にも改善点が見つかったら、次に見直す業務を具体化しましょう。Faciloの物件購入クラウドは、マイページでの提案や顧客の閲覧状況を踏まえたフォローを支援します。
電子契約をする方のよくある質問
ここでは、売主・買主・貸主・借主の方向けに、手続き前によくある疑問をまとめます。不明な点は署名操作の前に確認し、書面を受け取って保存するところまで進めましょう。
スマートフォンだけでも手続きできますか?
スマートフォンで利用できるサービスはありますが、すべての手続きがスマートフォンだけで完結するとは限りません。利用サービスの対応端末に加え、書類の細かな文字を読めるか、IT重説中に説明を受けながら書面を確認できるか、データを保存・出力できる環境があるかを確かめてください。機器や通信に不安があれば、事前に不動産会社へ相談しましょう。国交省マニュアル
相手が使う電子契約サービスに、自分も契約する必要がありますか?
受信者がサービスを導入せずに利用できるものもあります。たとえばPICKFORMの公式FAQでは、相手方による導入は不要と案内しています。ただし、受信側のアカウント、本人認証、費用の条件はサービスや署名方式によって異なるため、送信する不動産会社に確認してください。会社側の月額利用料と、自分に必要な手続き・負担は分けて確認します。
家族の端末やメールアドレスを使ってもよいですか?
端末の所有者だけで可否を決めず、契約する本人が書類を受け取り、自分の意思で確認・操作できるかを、不動産会社と確認してください。共有メールでは、誰が受領・操作したか分かりにくくなる場合があります。家族に操作を手伝ってもらうことと、代理人として契約を結んでもらうことも別です。本人以外が代わりに同意・署名する前に、権限と利用サービスの条件を確認しましょう。政府・押印についてのQ&A
途中で紙の書面に切り替えられますか?
はい。宅建業法上の書面は、電子交付を承諾した後でも、以後の交付を紙に切り替える旨を申し出られます。担当の不動産会社へ早めに連絡し、紙の書面やメール等で、電子交付を希望しない旨を伝えましょう。書類を開けない、保存できない場合も、その旨を伝えて対応を相談してください。ただし、紙に切り替えることが、すでに成立した契約を取り消すことを意味するわけではありません。手続きがどこまで進んでいるかを確認して切り替えます。国交省マニュアル・承諾後の意向変更、国交省FAQ(Q20)
電子契約の導入を、契約前後の業務改善につなげよう
不動産の電子契約を導入するときは、対象書類を整理し、相手の承諾、説明前の書面提供、契約成立後の交付、データ保存までの流れを決めましょう。サービスは、自社の書類と関係者で試し、費用と運用の両面から選ぶことが大切です。
契約の電子化を進める機会に、物件提案、売主への報告、顧客対応の情報共有まで見直すと、次に改善すべき業務も明確になります。
契約前後の提案・顧客対応も、情報がつながる仕組みへ
電子契約の導入を進めるときは、物件提案や売主への報告、担当者間の情報共有も振り返ってみましょう。Faciloには、不動産会社のこうした業務を支える製品があります。自社で改善したい業務に合わせて、機能をご確認いただけます。
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執筆:Facilo編集部/制度・製品・料金情報の確認日:2026年9月30日
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