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不動産仲介にかかる税金とは?シミュレーションや安く抑える方法も紹介

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目次

不動産の売買や賃貸では、仲介手数料のほかにも印紙税・登録免許税・譲渡所得税など、さまざまな税金が関係します。特に売買では金額が大きく、わずか数%の税率でも数十万円の差になることも。

消費税や非課税の区分を正しく理解していないと、思わぬ負担が生じるケースも少なくありません。

この記事では、不動産仲介にかかる税金の仕組みや計算方法、消費税の扱い、インボイス制度の影響までをわかりやすく解説します。不動産仲介の営業担当者はもちろん、不動産の購入や売却を検討している方も、税金に関する正しい知識をつけるためにぜひ参考にしてみてください。

不動産の仲介手数料には消費税がかかる

不動産会社に支払う仲介手数料には、消費税(10%)が課税されます。これは、消費税法上の「課税取引」に該当するためです。

国税庁によると、消費税は次の4つの条件をすべて満たす取引に課されます。

  1. 国内で行われる
  2. 事業者(個人事業主・法人)が事業として行う
  3. 対価(お金)を得て行う
  4. 「資産の譲渡・貸付け・役務(サービス)の提供」である

参照:国税庁「どんな取引が課税対象?

不動産会社の仲介サービスは、物件紹介や内見調整、条件交渉、契約書の作成などのサービス提供に対する報酬であり、上記4条件をすべて満たすため課税されます。

ただし取引の内容によっては、4条件を満たしていても法律で消費税をかけない(非課税)と定められている場合もあります。代表的なものは、土地の売買、住宅の家賃、保険料、税金などです。

また、個人同士の売買(事業でない取引)や海外で行われた取引のように、上記の4条件のいずれかを満たしていないケースは課税対象外(不課税)です。

参照:国税庁「No.6209 非課税と不課税の違い

不動産取引では「何に税金がかかるか」を明確に理解しておくことが大切です。

不動産の仲介手数料の税金

不動産の仲介手数料にかかる税金は、取引の種類によって異なります。ここでは、売買と賃貸のケースに分けて、それぞれの仲介手数料と消費税の仕組みを解説します。

売買

不動産売買における仲介手数料は、宅地建物取引業法によって報酬の上限額が定められおり、上限額を超えた手数料を顧客に請求できません。

なお、上限額は、次の速算式で簡単に求められます。

売買価格(税抜)仲介手数料の上限(税込)
200万円以下売買価格(税抜)×5%+消費税
200万円超〜400万円以下売買価格(税抜)×4%+2万円+消費税
400万円超売買価格(税抜)×3%+6万円+消費税

例えば、売買価格が3,000万円(税抜)の場合、以下の速算式で仲介手数料の税込上限額を求められます。

上限(税抜)=3,000万円×3%+6万円=96万円
上限(税込)=96万円×1.1=105万6,000円

また、土地自体の売買代金は非課税ですが、建物部分には消費税が課されます。仲介手数料を計算する際は、建物価格が税抜である点を確認しましょう。

賃貸

賃貸の仲介手数料も消費税の課税対象です。特に居住用物件では、宅地建物取引業法により次のような上限ルールが定められています。

  • 原則:依頼者の一方(貸主または借主)から「家賃1か月分×0.5+消費税」まで
  • 例外:借主の承諾がある場合に限り、その一方から「家賃1か月分+消費税」まで受領可
  • 合計上限:貸主・借主の双方から受け取る合計額は「家賃1か月分+消費税」まで

例えば、家賃10万円の居住用物件における賃貸仲介手数料の上限(借主のみ承諾した場合)は、以下のようになります。

  • 依頼者一方(貸主)から:10万円×0.5×1.1(消費税)=上限5.5万円(税込)
  • 依頼者一方(借主)から:10万円×1.1(消費税)=上限11万円(税込)
  • 依頼者双方から合計で:10万円×1.1(消費税)=上限11万円(税込)

参照:国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ

事業用賃貸は上限規律・運用が異なる場合があります。居住用と混同しないよう、媒介契約時に区分と条件を明確化しましょう。

また、居住用賃貸物件の「家賃」そのものは非課税です。あくまで不動産会社が行う仲介というサービスに対して消費税が発生する点を理解しておきましょう。

仲介手数料にかかる消費税額のシミュレーション

仲介手数料とその消費税額を具体的にイメージするために、いくつかの価格帯でシミュレーションしてみましょう。ここでは、売買価格が400万円を超える場合に適用される速算式「(売買価格×3%+6万円)+消費税」を用いて計算します。

<売買価格が2,000万円の場合>
仲介手数料(税抜):2,000万円×3%+6万円=66万円
消費税:66万円×10%= 6万6,000円
支払総額:72万6,000円

<売買価格が5,000万円の場合>
仲介手数料(税抜):5,000万円×3% + 6万円=156万円
消費税:156万円×10%=15.6万円
支払総額:171万6,000円

売買価格ごとの仲介手数料の上限(税抜・税込)を一覧にした早見表です。取引額に応じた手数料の目安としてご確認ください。

売買価格(税抜)
仲介手数料の上限額(税抜)仲介手数料の上限額(税込)
200万円10万円11万円
400万円18万円19.8万円
800万円30万円33万円
1,000万円36万円39万6,000円
2,000万円66万円72万6,000円
3,000万円96万円105万6,000円
4,000万円126万円138万6,000円
5,000万円156万円171万6,000円
6,000万円186万円204万6,000円
7,000万円216万円237万6,000円
8,000万円
246万円270万6,000円
9,000万円
276万円303万6,000円
1億円
306万円336万6,000円

※この早見表は、以下の速算式で算出しています。
・200万円以下:売買価格(税抜)×5%+消費税
・200万円超〜400万円以下:売買価格(税抜)×4%+2万円+消費税
・400万円超:売買価格(税抜)×3% +6万円+消費税
※低廉な空き家等(800万円以下)は特例により上限が異なる場合があります。

このように、売買価格が大きくなるにつれて、仲介手数料および消費税額も増加します。不動産取引の際は、これらの費用をあらかじめ資金計画に含めておくことが重要です。

不動産仲介で税金のかかる費用

不動産取引では、仲介手数料以外にもさまざまな税金がかかります。ここでは、代表的な税金のかかる費用について解説します。

印紙税

印紙税は、不動産売買契約書や住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約書)など、特定の文書を作成する際に課される国税です。納税は、契約書に収入印紙を貼り付けて消印することで行います。

印紙税は、契約金額が10万円を超える場合に課税され、高額になるほど高くなります。

平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成された契約書については、軽減措置の対象です。契約金額に応じた印紙税率は以下のとおりになります。

契約金額
本則税率軽減税率
10万円を超え50万円以下のもの400円200円
50万円を超え100万円以下のもの1,000円500円
100万円を超え500万円以下のもの2,000円1,000円
500万円超過から1,000万円以下のもの10,000円5,000円
1,000万円を超え5,000万円以下のもの20,000円10,000円
5,000万円を超え1億円以下のもの60,000円30,000円
1億円を超え5億円以下のもの100,000円60,000円
5億円を超え10億円以下のもの200,000円160,000円
10億円を超え50億円以下のもの400,000円320,000円
50億円を超えるもの600,000円480,000円

出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

最近増えている電子契約の場合、印紙税は不要です。契約手続きを効率化したい場合は、電子契約に対応したシステムの導入も検討するとよいでしょう。

登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権を移転するときや、住宅ローンを組むときの抵当権を設定する際に法務局へ納める税金です。

税額は、固定資産税評価額×所定税率で算出します。例えば、土地の売買による所有権移転登記の本則税率は2.0%(1000分の20)です。しかし、一定の要件を満たす場合には軽減措置が適用され、税率が引き下げられることもあります。

また、これらの多くは司法書士が代理申請するものです。そのため、別途司法書士報酬(課税)も発生するでしょう。

売却益への税金

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益には所得税・復興特別所得税・住民税が課されます。これらをまとめて、一般的に「譲渡所得にかかる税金(譲渡所得税)」と呼びます。

この税金は、不動産の所有期間が5年以下か5年を超えるかによって区分され、税率が大きく異なるのが特徴です。

項目税金の種類税率
短期譲渡所得(所有5年以下)所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%39.63%
長期譲渡所得(所有5年超)所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%20.315%

参照:国税庁「土地や建物を売ったとき

所有期間は売却した年の1月1日時点で判定されるため注意が必要です。マイホームの売却など、一定の要件を満たす場合には、3,000万円の特別控除などの特例が適用できることもあります。

司法書士への報酬代金

登記手続きを司法書士に依頼した場合、その報酬にも10%の消費税がかかります。司法書士への報酬は、登記の種類や不動産の価格、手続きの複雑さによって異なり、所有権移転登記の場合で5万円から10万円前後が一般的な相場です。

見積もりを取る際には、消費税が含まれているかを確認しましょう。

住宅ローンの手数料

住宅ローンを利用する際には、銀行などの金融機関に支払う融資(事務)手数料や、売却時に残債を一括で返済する際の繰上返済手数料が発生します。これらは金融機関が行うサービスへの対価であり、消費税の課税対象です。

一方、保証料や印紙税、団体信用生命保険料(団信)などは、金融・保険・税金に関する性質を持つため非課税または不課税となります。費用ごとに課税・非課税が異なるため、ローン明細の確認が欠かせません。

不動産仲介で消費税のかからない費用

不動産取引には、消費税がかからない費用も多く存在します。ここでは、どのような費用が非課税または不課税となるのかを具体的に見ていきましょう。

土地の代金

土地の売買代金に消費税はかかりません。これは、国税庁が定める通り、土地は商品やサービスのように「消費」されるものではなく、経済的な資本の移転とみなされるからです。

そのため、消費税法上では土地の取引は「非課税資産の譲渡」に分類されます。このルールは、宅地・農地・山林など土地の種類を問わず共通して適用されるものです。

一方、土地と建物をセットで購入する場合は、建物部分にのみ消費税が課税されます。契約書には土地と建物の価格を分けて記載し、総額表示の際は建物価格に対応する消費税額を明確にしなければなりません。

なお、駐車場として整備された土地を貸す場合は、施設の利用とみなされ、賃料に消費税がかかるため注意が必要です。

売主が個人の場合の建物代金

売主が事業者ではない個人の場合、その建物の代金は非課税となります。

消費税は、事業者が事業として行う取引に課される税金です。そのため、給与所得者がマイホームを売却するような、事業目的ではない個人間の取引には消費税が課されません。

一方で、売主が不動産会社などの法人である場合や、個人でも反復・継続して賃貸経営を行うなど事業として不動産を売却している場合は「事業者」とみなされ、建物部分に消費税が課税されます。

中古物件を購入する際は、売主が事業者か個人かを確認することが資金計画で非常に重要です。買主側の視点では、購入後にリフォームを行う場合、その費用には消費税がかかることも覚えておきましょう。

公的書類の発行手数料

不動産取引では、多くの公的書類が不可欠です。所有権移転登記や本人確認のため、登記簿謄本(登記事項証明書)、印鑑証明書、住民票などを求められます。これらの書類は市区町村役場や法務局で取得し、その際に支払う発行手数料に消費税はかかりません。

これは行政サービスに対する手数料であり、対価を得て行う事業には該当しない「不課税」取引とされているからです。ただし、これらの書類取得を司法書士へ代行してもらうと、司法書士へ支払う「代行手数料」や「報酬」に消費税が課税されます。

非課税なのは役所に直接支払う発行手数料のみという点を理解しておきましょう。

保険料

不動産購入時には、火災や地震による損害に備えて火災保険や地震保険へ加入するのが一般的です。これらの保険料は、消費税の課税対象外(非課税)です。

保険料は、将来のリスクに対する保障を提供する金融・保険サービスの一環とされており、消費税法で非課税取引と定められています。同様に、住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険(団信)の保険料も非課税です。

ただし、保険代理店による独自のホームセキュリティー導入サポートや、保証期間を延長する特別なプランといった付帯サービスには、消費税が課税されることがあります。

ローン保証料

住宅ローンを組む際、連帯保証人の代わりに保証会社を利用するケースでは、保証会社に対して「ローン保証料」を支払います。この保証料も、保険料と同様に「信用保証」という金融サービスの一環とみなされるため、消費税は非課税です。

保証料の支払い方法には、ローン契約時に一括で支払う「一括前払い型」と、毎月のローン金利に上乗せして支払う「金利上乗せ型」があります。どちらの形式であっても消費税はかかりません。

税金

不動産取引に関連して納める印紙税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税といった各種税金そのものに、消費税が二重でかかることはありません。

税金は、国や地方自治体が法律に基づいて徴収するものであり、事業者が提供する商品やサービスへの対価ではないため、消費税の課税対象外(不課税)となります。これは「税金に税金をかける」という二重課税を避けるための原則です。

例えば、不動産売買契約書に貼る収入印紙代(印紙税)や、登記手続きの際に納める登録免許税に消費税は含まれていません。同様に、不動産取得後に課される不動産取得税や、毎年納める固定資産税・都市計画税も、消費税の対象外です。

仲介手数料を安く抑える方法

仲介手数料は法律で上限が定められているだけで、下限はありません。そのため、工夫次第で費用を抑えられます。

もっとも一般的な方法は、複数の仲介会社を比較検討することです。不動産会社によっては、「仲介手数料半額」や「定額制」といった独自の料金体系を設けていたり、期間限定の割引キャンペーンを実施していたりする場合があります。

ただし、手数料の安さだけで仲介会社を選ぶのは危険です。仲介手数料は、質の高いサービスへの対価でもあります。過度な値引きや安さの追求は、広告活動が手薄になる、担当者のサポートが不十分になるなどのリスクも考えられます。

大切なのは、提供されるサービス内容と手数料のバランスを見極めることです。会社の信頼性や実績、担当者との相性などを総合的に判断し、納得のいくパートナーを選びましょう。

仲介手数料のより詳しい計算や「無料」の仕組みは、次の記事も参考にしてください。
⇒【早見表付】不動産の仲介手数料の計算方法!安くなるポイントも紹介
⇒不動産の仲介手数料が無料の仕組みとは?交渉方法や依頼時の注意点を解説

事業者が気をつけたい不動産の仲介業の税金

不動産仲介業を営む事業者にとって、正しい税務知識と適切な処理は信頼される経営に欠かせません。特に、顧客から受け取る仲介手数料に含まれる消費税は国に納付する義務があると、しっかり理解しておく必要があります。

また、2023年10月に導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応も重要です。課税事業者としてインボイス発行事業者の登録をしていない場合、取引先の法人顧客が仕入税額控除を受けられなくなり、取引を避けるリスクが生じます。

さらに、広告費や業務委託費などの日常的な経費は、課税・非課税・不課税を正確に区分した処理が大切です。税務やインボイス対応に不安がある場合は、税理士など専門家に早めに相談すると安心でしょう。

不動産仲介にかかる税金に関するよくある質問

ここでは、不動産仲介にかかる税金に関するよくある質問を紹介します。

  • Q1. 不動産の仲介手数料には消費税がかかりますか?
  • Q2. 不動産売却で利益が出た場合、どのような税金がかかりますか?
  • Q3. 個人から中古住宅を買う場合、建物に消費税はかかりますか?
  • Q4. 土地の売買代金には消費税がかかりますか?

Q1. 不動産の仲介手数料には消費税がかかりますか?

仲介手数料は、不動産会社が行う「サービス提供」に対する報酬として扱われるため、消費税(10%)が課税されます。ただし、土地の売買代金や居住用住宅の家賃など、取引そのものは非課税です。

Q2. 不動産売却で利益が出た場合、どのような税金がかかりますか?

不動産の売却で利益(譲渡所得)が出た場合、所得税・復興特別所得税・住民税が課されます。

所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得(約39.63%)」、5年超なら「長期譲渡所得(約20.315%)」の税率が適用されます。

Q3. 個人から中古住宅を買う場合、建物に消費税はかかりますか?

一般の個人が自宅などを売る場合、売主は事業者ではないため、建物代金に消費税はかかりません。

ただし、売主が個人であっても、アパート経営などを継続的に行っている場合は「事業者」とみなされ、建物部分は消費税が課税されるので注意が必要です。

Q4. 土地の売買代金には消費税がかかりますか?

かかりません。土地の譲渡や貸付けは、消費税法上非課税取引と定められています。

土地と建物を一括で購入する場合は、建物部分のみ課税されるため、契約書で価格を分けて記載することが重要です。

不動産仲介と税金の仕組みを理解して運営しよう

この記事では、不動産仲介に関わる税金や消費税の仕組み、計算方法、注意点を解説しました。

仲介手数料は課税対象であり、特に不動産売買のように取引額が大きい場合は、税額も無視できません。また、印紙税や登録免許税など、取引の段階ごとに発生する税金も把握しておく必要があります。

こうした税金への理解は、不動産仲介会社にとって顧客からの信頼を得るための重要な要素です。さらに、購入や売却を検討している顧客にとっても、正確な資金計画を立てるうえで欠かせません。

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