三為契約のお金の流れを図解|売買代金・差額・決済時の確認点
不動産仲介の基礎知識

目次
不動産の三為契約では、一般的な直接移転型を例にすると、最終買主Cが三為業者Bへ代金を払い、Bが元の売主Aへ代金を支払います。一方、所有権は契約で定めた条件を満たすことで、AからCへ直接移転する形をとります。
つまり、お金の流れと所有権の流れは同じではありません。「Bの名義にならないのに、なぜBへ支払うのか」「差額は仲介手数料なのか」と疑問に感じたら、契約・代金・所有権を別々に整理すると理解しやすくなります。
この記事では、三為契約を提示された買主を主な対象に、仮想例で代金と差額を説明し、契約前に確認したい事項をまとめます。実際の支払先や時点は契約・融資条件によって異なるため、図だけで判断せず、契約書と決済の段取りを照合してください。
三為契約のお金は誰から誰へ流れる?
A・B・Cの立場と、代金の基本形
「三為」は「第三者のためにする契約」の略として使われます。不動産実務では呼び方だけでは契約内容を特定できないため、本記事は、AとB、BとCがそれぞれ売買契約を結び、適切な特約などによって所有権をAからCへ直接移す形を説明します。
当事者 | 立場 | 代金の基本的な動き |
|---|---|---|
A:元の売主 | もともと不動産を所有する人・会社 | BからA–B間の売買代金を受け取る |
B:三為業者 | Aから買う契約と、Cへ売る契約を結ぶ売買当事者 | Cから受け取る代金と、Aへ払う代金を管理する |
C:最終買主 | Bと売買契約を結び、所有権の直接移転を受ける人・会社 | BへB–C間の売買代金を支払う |

出典:e-Gov法令検索
例えば、A–B間の売買代金を3,000万円、B–C間を3,300万円とすると、総額では「C→Bが3,300万円」「B→Aが3,000万円」です。Bの売買差額は300万円になります。これは説明用の仮想金額で、相場や利益率の目安ではありません。
実際には、代金を一度に全額払うとは限りません。手付金を先に支払い、決済日に残代金を支払う場合は、それぞれの契約ごとに金額と時点を整理します。第三者の口座への支払などを指示された場合も、指示だけで進めず、契約上の根拠・受領権限・振込先を確認しましょう。
手付金と残代金に分けると、必要資金が見える
次は、A–B間の手付金を300万円、B–C間を200万円と仮定した例です。手付金を売買代金に充当するものとし、税・諸費用・借入は省いています。
契約 | 代金総額 | 先に払う手付金 | 決済時の残代金 |
|---|---|---|---|
A–B | 3,000万円 | B→A:300万円 | B→A:2,700万円 |
B–C | 3,300万円 | C→B:200万円 | C→B:3,100万円 |
BがCから手付金を受け取った後にAへ支払える場合でも、この例では100万円の差が出ます。Aへの支払いが先なら、その時点では300万円を用意する必要があります。決済日の受払差は400万円です。そこから、手付金の段階で先に負担した100万円を差し引くと、全体の売買差額は300万円になります(400万円−100万円=300万円)。
このように、利益の計算と、その時点で必要な現金は別です。さらに手付金の保全措置が必要となる場合や、融資実行条件による制約もあります。受け取った金銭を無条件で別契約の支払いへ使えると考えないようにしてください。
三為契約のお金は、代金総額だけでなく「誰が・誰へ・いつ・いくら払うか」を二つの契約ごとに確認します。
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契約と所有権の流れがお金と異なる理由
第三者へ給付する契約を、所有権の移転に使う
民法537条は、契約の当事者が第三者に給付することを約束した場合、その第三者が直接給付を求める権利を持つ仕組みを定めています。第三者の権利が発生するのは、その第三者が債務者に対して契約の利益を受ける意思を表示したときです。民法537条・538条
直接移転型では、A–B間の契約に、所有権をBが指定する第三者へ移すための定めを設けます。B–C間の契約もそれと整合させ、Cの受益の意思表示、代金の支払、所有権移転の時期などを確認します。
「三為契約」という表題を付ければ、自動的に所有権がAからCへ移るわけではありません。特約の内容と必要な意思表示がそろっていること、売主の抵当権抹消など必要な準備ができていることを、登記を担当する司法書士等も含めて確認します。
三つの流れを同じ矢印にしない
確認するもの | 本記事の直接移転型の例 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
契約 | A–BとB–Cの二つの売買契約 | Cにとって契約上の売主はB |
代金 | C→B、B→A | 金額・手付・残額・支払時点は各契約で確認 |
所有権 | 条件を満たしたうえでA→C | 登記名義を飛ばすだけの取引とは区別 |
Bが売買当事者であることと、Bが所有権を取得しないことは両立し得ます。Cは登記上の所有者Aだけでなく、契約上の売主Bの義務・責任も確認する必要があります。
通常の転売や、買主の地位の譲渡との違い
通常の転売では、Bがいったん不動産を取得し、次にCへ売却します。本記事の直接移転型は、Bに所有権を移さずAからCへ移す点が異なります。実際に所有権がA→B→Cと移っているのに、単にBの登記だけを省く話として説明しないことが大切です。
買主の地位の譲渡は、Bが持つ契約上の立場をCへ移す仕組みです。民法539条の2では、譲渡の合意に加えて、契約の相手方の承諾を前提としています。二つの売買契約を置く直接移転型と、契約上の地位を引き継ぐ形を混同しないようにしましょう。民法539条の2
媒介を行う仲介会社の役割から整理したい場合は、不動産仲介の仕組みと仕事内容も併せて確認できます。
契約の相手、代金の支払先、所有権の移転元は、必ずしも同じではありません。三つを分けて読むことが理解の出発点です。
不動産会社で、お客様への提案や連絡の環境も見直す方へ。法務・登記の確認とは分けて、日常業務に必要な支援を検討できます。
Bに残る売買差額と、別にかかる費用
300万円の差額は、そのまま手取りではない
先ほどの例では、3,300万円から3,000万円を引いた300万円が、費用を差し引く前の売買差額です。そこからBが負担する費用や税を確認しなければ、最終的な利益は分かりません。
区分 | 確認する内容 |
|---|---|
売買差額 | B–C間の代金からA–B間の代金を差し引いた額 |
取引のための支出 | 調査、契約関係の作業、専門家への報酬などの負担者・金額 |
資金調達の費用 | 借入利息・融資手数料・つなぎ資金が必要か |
仲介報酬 | 別途仲介を依頼した場合の報酬。売買差額とは別に確認 |
税・精算金等 | 取引形態や当事者の属性に応じて、税理士等へ確認 |
Bは単にAとCを紹介するだけの立場ではなく、売買契約の当事者として約束した義務を負います。売主との条件調整や買主の確保、引渡しに向けた調整などを担うことがありますが、実際の担当範囲は契約と取引内容によります。
役割があるからどの価格でも妥当というわけではなく、差額があるだけで不当に高いともいえません。買主は、類似物件の条件、物件の状態、自分の目的に合うか、必要な費用を含めた購入総額から判断しましょう。
仲介手数料と売買差額を区別する
本記事のBはCに対する売主なので、Bが受け取る売買代金と、仲介会社へ支払う仲介手数料は性質が違います。別の会社がA–B間やB–C間の仲介を行う場合には、仲介報酬が発生することがあります。
「三為だから手数料が必ずゼロ」「差額以外の費用はない」とは考えず、見積書にある各項目について、支払先・目的・契約上の根拠を確認してください。不明な調整費やコンサルティング料があれば、何の対価か説明を受けます。
一般的な買取再販では、取得費や改修費、保有中の費用なども利益を左右します。比較の考え方は、買取再販のビジネスモデルと利益の計算で解説しています。
売買差額、取引費用、仲介報酬、必要な現金を分けると、価格と資金の説明を確かめやすくなります。
仲介会社が業務改善への投資を検討するときは、実際の企業がどの作業を変えたかも参考になります。Faciloの導入事例集では、業務時間や顧客体験に関する取り組みを紹介しています。
契約から決済までに確認すること
二つの契約の条件と日程を並べる
直接移転型では、A–B間とB–C間を別々に読むだけでなく、条件を並べて確認する必要があります。一方の契約で予定したことが、もう一方では実行できない状態になっていないかを点検します。

項目 | 並べて確認すること |
|---|---|
当事者・対象 | 誰が売主・買主か、同じ不動産・権利を対象にしているか |
支払い | 手付・残代金・精算金の金額、期日、振込先 |
所有権移転 | 指定する取得者、必要な意思表示、移転条件と時点 |
融資 | 承認・実行の条件、期限、利用できない場合の扱い |
引渡し | 残置物、占有、鍵、境界等の確認と担当 |
解除等 | 解除できる条件・期限、違約金、手付金等の返還 |
二つの契約の期限や条件がずれると、BがCから代金を受け取れない一方でAへの支払義務は残る、といった問題が起こり得ます。どちらかが解除されたら他方も自動的に終わる、という前提にせず、条項を確認しましょう。
融資金融機関には、実際の取引の形を説明する
買主が融資を使う場合は、三為契約であること、契約上の売主と登記名義人、代金の支払先、所有権移転の予定などを金融機関へ説明します。取扱いの可否や必要書類は金融機関・商品・案件によって異なり、どこでも同じ条件で使えるとは限りません。
融資が承認されることと、希望する日に実行できることも分けて確認します。実行前に必要な登記書類、自己資金の入金、本人確認などが未了であれば、予定どおり進まない可能性があります。
送金と登記の段取りを、関係者間で共有する
決済前には、金額の一覧だけでなく、誰が入金を確認するか、登記に必要な書類を誰が持っているか、抵当権の抹消があるかなどを整理します。司法書士には直前ではなく、契約・所有権移転の仕組みを含めて相談しておきましょう。
入金だけで登記が自動的に完了するわけではありません。登記の目的や手続きの基本は、不動産登記の種類・手続き・確認方法で整理しています。
同じ日に決済する予定でも、融資・送金・書類・所有権移転の条件は別々に確認し、関係者が同じ段取りを持つ必要があります。
仲介会社の方へ。契約・登記の確認と並行して、普段の物件提案やお客様との連絡にかかる作業も見直したい場合に、業務ごとの支援内容を確認できます。
買主・売主が注意したいリスク
買主C:相手方・価格・責任の説明を確かめる
買主が最初に確認したいのは、「自分の契約上の売主は誰か」です。本記事の形ではBが売主で、Aは所有権の直接移転元になります。引渡しや契約不適合があった場合に誰へ連絡し、どの契約に基づいて対応を求めるのか確認してください。
建物や土地の状態、権利関係、境界、賃貸中であれば賃貸借の状況など、物件自体の確認も通常どおり必要です。取引方式の説明に納得しても、物件調査を省けるわけではありません。
次のような場合は、支払いを急ぐ前に説明を求めましょう。
- 契約上の売主と振込先が異なるのに、その理由・権限を確認できない
- 所有権がいつ、どの条件で移るか説明があいまい
- 金融機関へ取引の形を伝えないよう求められる
- 解除や支払不能時に、お金がどう扱われるか分からない
元の売主A:代金受領と移転条件を確認する
Aの立場では、Bが指定した相手へ所有権を移す条項と、自分が代金を受け取る条件の関係が重要です。CがBへ支払ったことだけをもって、Aへの代金の支払いまで終わったと誤認しないようにしてください。
代金受領前にどの書類を渡すのか、受益の意思表示や指定がいつ行われるのか、Bが支払えない場合の対応を、契約書と決済の段取りで確認します。第三者の権利が発生した後の変更や解除には民法538条の規律も関係するため、AとBだけで自由に白紙へ戻せるとは考えません。
決済できない場合に備えて、連絡先と対応条件を残す
融資不成立、入金遅延、必要書類の不足などが起きたときは、まずどの条件が満たされていないかを切り分けます。延期するのか、解除できるのか、追加の費用や責任が生じるのかは、契約条項と個別事情によります。
当事者の説明だけでは判断できない場合は、契約内容は弁護士等、登記の可否や書類は司法書士、融資は金融機関、税務は税理士と、論点に合う相談先へ確認すると整理しやすくなります。
「三為だから危険」「三為なら安全」と名称で決めず、契約・支払い・責任・物件の状態を具体的に確かめましょう。
お客様の検討を支える仲介会社へ。説明した内容や次に確認することを、担当者だけに残さない運用も大切です。日々の顧客対応を支えるサービス資料から、必要な業務の範囲を検討できます。
不動産会社向け:契約・説明・関係者連絡の整理
他人物売買の制限と、その適用・例外を確認する
ここからは、不動産会社の実務担当者向けです。民法上の契約が成立するかという問題と、宅地建物取引業法上の規制に適合するかという問題を分けて確認します。
宅建業法33条の2は、宅建業者が自己の所有に属さない宅地・建物について、自ら売主となる売買契約を結ぶことを原則として制限し、取得契約を締結している場合等の例外を定めています。ただし、第1号の取得契約からは「効力の発生が条件にかかるもの」が除かれます。契約を結んだ事実だけで例外になると判断しないことが大切です。業者間取引には78条2項の適用除外があるため、相手方の立場も確認が必要です。宅地建物取引業法33条の2・78条
施行規則15条の6第4号には、所有権を宅建業者が指定する者に移転する契約を締結している場合の規定があります。この「指定する者」には、その宅建業者自身を含む場合に限るという条件が付いています。特約の名称だけで例外に当たると判断せず、条文と実際の契約を照合してください。宅地建物取引業法施行規則15条の6
契約上の売主・媒介の立場と説明内容をそろえる
自社が売主なのか、媒介なのか、当事者の代理なのかによって、立場と説明する事項が変わります。Bを単なる仲介会社と説明すると、買主が責任の所在を誤認するおそれがあります。
重要事項説明・契約書面、契約不適合責任、手付金等の保全措置などについても、当事者、物件、金額、契約内容に応じた確認が必要です。「三為契約だからすべて免除される」「必ず同じ期間の責任を負う」とまとめて説明しないようにしましょう。
確認待ちの事項を、担当者の記憶に置かない
社内では、確認済みの事実、依頼した確認、回答待ちを分け、相手・日時・根拠書類を残します。例えば「金融機関了承済み」だけでは、誰が何を了承したか分かりません。「取引方式を説明済み」「必要書類の回答待ち」「融資実行日は未確定」のように分けると、次の担当者が確認できます。
製品で顧客への提案・やり取りを整理することと、契約の適法性や登記の可否を判断することは別です。専門家による確認や金融機関の判断を、顧客管理ツールで代替する前提にしないことが重要です。
契約の法務確認、決済・登記の準備、顧客への説明記録を分け、それぞれの担当と未完了事項を明確にしましょう。
仲介会社の業務を仕組みにする取り組みは、ほかの会社の導入前後からも学べます。Faciloの事例集は、法務の判断資料ではなく、物件提案や顧客対応を見直す際の参考資料です。
三為契約のよくある疑問と確認先
三為契約は違法なのですか?
第三者のためにする契約自体は民法に定められています。ただし、個別の不動産取引では、所有権移転の条項や意思表示、宅建業法の適用・例外、当事者の説明などを確認する必要があります。名称だけで適法・違法を断定できません。
Bは自己資金なしで取引できますか?
そうとは限りません。手付金の差や支払日のずれ、調査・契約関係の費用、融資実行前の支払いなどが生じます。Cの代金だけを前提に計画すると、入金が遅れたときの対応ができなくなるおそれがあります。
買主は仲介手数料を払うのですか?
誰にどの業務を依頼し、どの立場で取引するかによります。Bの売買差額と仲介報酬は別です。別途仲介会社が入る場合は、媒介契約や見積書で報酬を確認してください。
同日決済でなければ成立しませんか?
「第三者のためにする契約」という制度そのものが、すべて同日の決済を要求しているわけではありません。一方、資金や融資の条件から同日で進める段取りが必要な案件はあります。契約上の支払期日・移転条件と、金融機関・司法書士等の確認をそろえて判断します。
不明点を整理するときは、代金の表、二つの契約、所有権移転の条件を並べ、確認先を決めることが第一歩です。
取引の説明とともに、日々の顧客対応も整えたい仲介会社へ
複雑な取引ほど、お客様への説明や確認のやり取りが増えます。法務・登記は専門家と確認しながら、普段の物件提案や顧客との連絡も、担当者一人に依存しない環境を整えたいところです。
Faciloは、買主への物件提案、売主への活動報告、顧客情報・接客履歴の管理などを支えるサービスを提供しています。自社で改善したい業務に合わせて、対象製品の内容を比較できます。
執筆:Facilo編集部/情報確認日:2026年11月4日
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